警部補ガーランドの最期 4(ボツ)
※この作品はボツになりました※
大阪市街の中心部にそびえ立つ巨大な黒い塔――梅田城から、六つの影が飛び出した。影たちは空中で弧を描き、南東の方角へと向かう。青い光の尾を曳いて飛ぶ様は、真昼の空に突如現れた彗星のよう。
こんな風に空が飛べるものが、そうそうあるはずがない。警察局のフロートドレス部隊、空機131分隊である。
「敵はフリーのキャリオンクロウと見られるFD30機ほど。殲滅の必要はない、追い散らしが僕らの役目だ」
先頭を切って飛ぶガーランドが後続各機に通信を送った。その一声に応えるように、131分隊の面々は素早く見事な楔形陣形を作る。ガーランドの右翼には、第1班のシーファとルイス。左翼には第2班のミュート、マーガレット、ウェイン。寄せ集め部隊だけにフロートドレスの塗装がバラバラで、並んで飛行するその様はまるで虹のように見える。
ふと、ガーランドの描く青いラインに、シーファの白い影が寄り添うように近づいた。
『なあ、ガーランド……』
「どうした、何か質問?」
ガーランドの口調は、いつもと何一つ変わらなかった。目の前の仕事に邁進するいつものガーランドだった。シーファはほっと胸を撫で下ろす。心配していたのだ。ガーランドは悩むあまり仕事が手につかなくなるかもしれない、と。
だがそれは杞憂だったようだ。
『いや、なんでもないっ』
元気よく答えながら、シーファは軽くロールして自分のポジションに戻った。
『早く終わらせて帰りたいな、って思っただけ。見たいテレビあるんだ』
「そうなのか。じゃあ各機、時間はかけないぞ!」
がくっ。
思わず全員が隊形を崩した。ウェインはフラフラ飛んでなんとか隊列に戻りながら、
『隊長! それでいいんすか!?』
「冗談だよ、冗談……ん? 見えてきた」
ガーランドの視線の先に、まるで雲のような黒いわだかまりがあった。時々刻々形を変える不気味な黒い塊……《映像拡大》をコマンド。網膜投影HUDに、我が物顔で飛び回る無数のキャリオンクロウたちが映し出される。
コンタクトまで10秒。
ガーランドは右手のサブマシンガンを握りしめ、
「準備いいか! 中央突破、抜くぞっ!」
『了解!』
全隊員の声が一つになった。