« チャット移転 | メイン | ARMORED CORE V -形骸- (2) »

2012年05月25日

 ■ ARMORED CORE V -形骸- (1)

      1

「発掘ってのは面白い作業でさ」
 ほざくのはベイズで、奴は茜色の空の下、土埃色カーキの掘削メクを操っている。その操腕テクときたら惚れ惚れするようだ――二年前までシティで高精密市庁舎の組立に従事していただけの事はある。マイクロフレッチャの孔を通す動作精度が発掘という偉大で粗雑な作業に必要かは別として。
「このごろはやれ露天掘りだ、Ra:VENの縄張り争いだ、企業論理だ」
「みんな生きるのに四苦八苦なんだよ。システムの複雑化は維持管理の困難を生んで――」
「維持したいかい……。維持したいようにすればできるかい……」
「できると思うよ」
「なら、おいらとお前は価値観が違うな。例えばよ、発掘だ」
 ぼくは無言で作業の続きに取りかかった。ベイズが掘り散らかした土砂を、邪魔にならないよう避けておく大切な仕事だ。これをする者がなければ、彼は遠からず自分が積み上げた土と岩とに埋もれてしまう。
 無言になったのは、何百回と聞いた耳タコのたわごとをうやむやの内に聞かずに済まそうとして、物の見事に失敗したからだ。どんなに腕が良かろうと、ベイズにはこの衒学癖があるから、組もうという人間はぼくしかいない。
「流行の露天掘りなんぞせず、こうして縦に縦に掘っていく。と、層が見えてくる。歴史の層、技術の層、地球の表面グローバルコーテックスを覆う層状レイヤード教訓」
「昔は良かったってんだろう」
「精神論じゃねえや。見ろや小僧、これ何に見える……。アクチュエイタ、だぜ。ちっぽけな歯車のようにしか見えまい。このサイズのアクチュエイタを、何万と組み合わせる。人型にする。あら不思議、超弩級メクのできあがり、さ。アクチュエイタ複雑系ACS、とおれっちは呼んでいる」
「今の技術じゃ組立できないから――できても動かせるだけのエネルギィがないから――」
「まっこと、そのとおり。それほどにビッとしてパッとしてたご先祖様方が、どうなった……。素晴らしくきれいさっぱり自滅して、土の下。これがほんとの墓穴を掘る」
 ケラケラとベイズは一人で笑うが、ぼくはさっぱり面白くない。土砂のより分け作業がはかどった。
「それも一代だけじゃないんだ。層は下に行くほど高度技術になる。逆に言や、上に行くほどヘボい技術が積もっていく。人類てえやつは、沢山の文明を悪い意味で過去の物に変えながら、滅びて、なんとか生き繋いで、その繰り返し。挙げ句が地表面の9割6分を汚染されたこのざまさ。だがね、小僧。どう思う……。ご先祖様が、自分たちの技術を、文明を、命を、維持したがらなかったと思うかい……」
「そんなこと言って虚無的だから、市長に目を付けられるんだよ」
「違うな。おれは、維持するなって言ったんじゃない」
 ベイズの声にはどこか、寂しげというか、戸惑いというか――違う。恐怖とか、そういうものが入っているように聞こえた。
「維持するまでもなく、実はもう、全部終わってんじゃないか、って言ったのさ」




 お久しぶりです! 闇鴉です!
 本当に長い間更新しなくて申し訳ありません。表には出しておりませんが、裏では細々と書いていたりしておりました。
 で、投稿用の長編を書くかたわら、気分転換にひさびさのAC小説でも書いてみようと思い、始めてみました。ネタは最新作「ARMORED CORE V」。
 ACVをやってて、「ひょっとしてこの世界、こういう設定なんじゃねえか……?」と思ったことを、つらつらとプロットも予定も何もなく思いつくままに書いていこうと思います。

 テーマだけは決めてありますが、それはまた、完結にこぎ着けたときに。

 不定期連載。趣味丸出し。一番書きやすいスタイル。そして、アーマード・コア。

投稿者 darkcrow : 2012年05月25日 03:42

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dark-crow.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/259

コメント

コメントしてください




保存しますか?