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2012年05月30日
4
発掘ポイントは長持ちしない。というのも、
「なぁんでぇ、こん畜生。どっから湧いた……」
「邪険にするなよぅ、ベイズよぅ」
ばかでかい
「蛇の道は蛇、困ったときはお互い様、魚心あらば水心」
「手前で言うなぃ」
「まあ、まあ、ベイズ」
ぼくは暴れ出しそうになるベイズの掘削アームを素早く抑え込んだ。腹は立つけれど、自分らだけで占領しようというわけじゃなし。確かにお互い様でもあることだし。
どっかで穴掘りが歌っている。
――ひとぉつ掘ったら
夕餉が食える
そのうち調子っぱずれな旋律に便乗する歌声が集まりだし、
――ふたぁつ掘ったら
ウォッカが飲める
みいっつ掘ったら
女が抱ける
いつの間にか大合唱となったそれを、ベイズは不機嫌に聞いている。だが彼の掘削メクがリズムに乗せて土を掻くのを見ると、さほど不機嫌でもないのかも。
「ACだあっ」
掘りに掘って昼が過ぎた頃、浮かれた声が無差別発信された。大勢の穴掘りがこぞって見に行くと、確かに、上半身の半ばまで土に埋まったACが穴の底にいる。金星を上げた当人の無邪気な喜びようが印象的だ。たいがいの野次馬は嫉妬や賞賛の唸り声をあげるが、ベイズは冷淡に一瞥したのみ。
「ただのACじゃねえか」
「でもひと月分の稼ぎだよ」
「そんなら、ひと月稼ぎゃいい。なんてこともねえや」
「あんた、何、探してんだい……」
ぼくは兼ねてからの疑問を、とうとう口にした。
「何って……」
「
「お前には話さん」
「どうして……」
「知らない方がいい、小僧。お前にはその権利も義務もない」
頭に来た。
「偉そうにっ。あんた、そうして何もかも隠してさ、自分一人で合点して、
ぼくは何を口走ってるんだろうか。戻って自分の作業に没頭するベイズは困惑しているように見える。思ったことを思ったように言えない。ベイズのことをそう表現したけど、人のことを言えた義理なのか。ぼくときたらどうだ。思っていることを思ったように思えない。
ぼくも自分の仕事に戻った。
それからずっと無言だったが、だからといって作業に支障を来すことはなかった。
投稿者 darkcrow : 2012年05月30日 14:25
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