« ARMORED CORE V -形骸- (8) | メイン | ARMORED CORE V -形骸- (10) »
2012年06月08日
9
「ワン・トゥ、ワン・トゥトゥッ」
主任はご機嫌だ。
「所長さんのパーリィは牢ン中っ。囚人バンドが大喚きっ」
陽気な古代の歌を口ずさみながら、その手は淀みなく
かつて
「主任……。どこへ行ったのですか、主任……」
「はぁ~いっ。こっこだよぉ~ん、キャッロりぃ~ん」
高精密市庁舎は、全長300mに及ぶ巨大な集積回路の集合体だ。その演算能力は、市長を騙すためのいくつかの
そして、実際に
故に、主任の位置と意図ははっきりと認識できた。市庁舎の塔の中程、大きく張り出した足場の上でACに片膝をつかせ、大砲に電力をチャージさせながら、狙いを定めるのはシティの第二居住区。
「何をなさるのです……」
「あ、ごっめーんっ、言ってなかったっけ……。
「困った方ですね」
キャロル・ドーリィは溜息交じりに言う。
「そういうことは、きちんと報告していただかないと」
「いっやあ、うっかりうっかり。なんかね、そのへんに
「その区画には、他にシティ住民が9000人ほど住んでいますが……」
「へぇー、そうなんだ。さっすがキャロりん、物知りぃ」
ACの頭をリズムに乗せて上下させながら、
「で、それが何か問題……」
「いえ、別段。電力、そちらに回しますね」
「やったあ。ありがと。できる女。愛してるっ。今度デートしない……」
「一度脳みその分解掃除をされたほうがよろしいかと。それでは、また」
今度は主任が溜息を吐く番だ。溜息――彼/彼女には必要のない行動、呼吸。
ならば我々は老害以外の何物でもないのではないか。
「ちぇっ、つれないの。曲変えよっと」
ぶつくさ言って、主任は音楽を切り替える。今度はさっきの曲より数百年下って、第一層時代に流行った歌。
「アァイムシンカァ、トゥ・トゥ、トゥ・トゥトゥ。電力満タンまでもう少しぃ」
主任のカメラアイが音を立てて収束する。長距離射撃モード。ACが持つ機能の全てを測量と射線軸合わせに注ぎ込む。
それは、油断だ。
そして彼は、ずっとその瞬間を狙っていた。
稲妻。
連続
「くたばれ糞野郎ォッ」
ベイズの放った榴弾が、主任の背中に炸裂した。
投稿者 darkcrow : 2012年06月08日 21:37
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dark-crow.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/266