日時:2002年3月2日(土) 10:30〜
場所:兵庫県神戸市中央区三宮町1−5−8「星電社 三宮PC-PORT店」
報告者:闇鴉
その日、おれは三宮にいた。関西の人間なら知っているだろう。大阪の梅田、京都の河原町にならぶ、神戸の繁華街である。おれの家からでは日本橋に行くのと大して変わらない時間でここまでくることができる。阪急電車は偉大なり、だ。それでいて地下鉄に連絡しないぶん、運賃も安上がりときてる。おれとしちゃ、いつも三宮でイベントしてくれたら嬉しいんだけど。
目的の場所に向けて、おれは意気揚々と歩きだした。三宮に来たのはこれが初めて。手元にあるのは目的地の住所だけで、地図一つ持ち合わせちゃいない。番地を頼りに10分ほど歩き回る。見つけたぜ。あれが……何の変哲もない電気店の前にできた人だかりが、おれの目的のものだ。
おれは何気なく近付くと、人だかりの中を覗き込んだ。
画面の中では、見たこともない新型ACがぐいぐい動き回っていた。
さて、今回はTGS、東京ゲームショウ以来はじめての体験試遊会だ。フロムもきっと力を入れてる……と思ったんだがな。来てるスタッフはたった一人だった。
後藤。フロムソフトの営業としては、そこそこに名の知れた奴。相手にとって不足はない。
さて、その後しばらく噂の新型を動かしてみた。とりあえず動かした感想を列挙してみよう。
◆ACの挙動は、AC2AAよりも多少軽くなっているようだった。地上でのブースト速度は変わらないが、ジャンプ時の上昇性能が多少、あくまで多少だが良くなっているらしい。初代ACとAC2のどちらに似ているかと言われれば、AC2に似ている。
◆オーバードブースト後の慣性が強くなっている。以前にも地上ギリギリでOBを切って滑るという技術があったが、今回はさらに滑りやすくなっているようである。
◆噂の四脚。がしゃがしゃ移動の気色悪さは想像以上だった。蜘蛛嫌いのおれとしては鳥肌が立つほどだ。合格と言っていい。また、歩行中でも地上ブースト中でも、構え無しに肩キャノンを撃つことができる。性能的には小ジャンプのないかわりにキャノンが撃てる軽量二脚、といったところだろう。
◆マシンガンから薬莢が排出されていた。初めて見たときは、弾が二方向に分かれて出ているんじゃないかと思ったくらいに薬莢がはっきり見える。格好いいが、弾道は多少見にくい。
◆ホバータンクの性能が大きく変わっている。非常に移動速度が速く、前作までの四脚やフロートなみにすいすい動ける。地上ブーストがないフロートだと思えばいいだろう。ひょっとしたら、前作までの四脚という位置づけなのかもしれない。
◆フロートは三種類ほど見かけたが、どれもこれもデザインが独特。かなりアレでナニな機体が組めることだろう。
◆左腕用火器。ショップに売っているのは二種類。グレネードランチャーと火焔放射器だった。グレネードはまさにほんものの榴弾砲で、放物線上に榴弾を発射する。榴弾は着弾点で爆発を起こす。火焔放射器は前作までと大してかわらない。いずれもロックオンできないため、榴弾砲は弾道の違うロケットのつもりで使う必要がある。
◆右腕用ブレード。ショップに売っているのは二種類。この二つが噂のパイルバンカーである。パイルバンカーというよりはパンチに近いような気がする。杭のような形で、拳を突きだして相手に当てる。攻撃範囲が狭く、その代わり威力が高かった。また弾数制限があり、どちらも20発前後だったと記憶している。
◆イクシード・オービット。EOとOBは完全にコアに固定された能力で、EOのコアが三種類、OBのコアが三種類あった。初期コアはOBである。実際に使用できたのは軽量コアのEOだけだった。これはエネルギーマシンガンによく似た性能だった。R3ボタン押し込みで発動し、ロックオンサイト内の敵に対して自動的に攻撃する。ただし、自動的に連射するため、あっというまにゲージ切れを起こす。ちゃんとR3を押して止めてやらないといけない。ちなみに弾数制限はあった。しかしコアにしまっておくと、ゆっくりと残弾が補充されていく。つまり実質弾数無限である。これがあれば、武器をパージしても、左腕にブレードを持たなくても、弾切れで勝負を投げる必要はなくなる。とはいってもEOだけで戦うのは辛そうだ。威力そのものは高いので、小型ミサイルの弾幕で惑わして、その隙にEO……などという使い方ができそうだ。
EOコアはミッションにおいて重要な役割を果たしそうだ。弾数無限、エネルギー兵器という条件を考えれば、大量の雑魚を一掃するのにこれほど向いている武器はない。対戦においても、軽量EOの爆発力は十分武器になりうるだろう。なにせ、ゲージ切れするまでの3秒で敵のAPを3000ちかくも奪っていくのだ。これを巧く使えるかどうかがAC3の勝敗の決め手になりそうだ。
◆重量オーバーによる出撃。積めば積むほど遅くなる。めいっぱい積んだ四脚を見たが、まるでナメクジのような遅さで、戦うなどと言うレベルではなかった。ヤグアルでももう少し早い。ただし、ギリギリで重量違反になった軽量二脚などは、そこそこ爽快に戦えるようだ。少なくとも中量級程度の機動性はあったように思う。
◆武装解除。これが今回の鍵になるだろう。一般的な中量二脚、重量制限ギリギリまで積んだもので実験した。まず、初めの地上ブースト速度が速度計で340km/h。肩のレーザーキャノンを捨てて360km/h。肩のミサイルを捨てて380km/h。腕のライフルを捨てて390km/h。エクステンションを捨てて400km/h。最後にブレードを捨てて410km/hくらいになった。ケイトリンふうに言うと、「スゲエことよこれは!」である。中量級で武装を捨てていけば、このくらいの速度が得られるだろうという目安である。実際、全て捨てた後は軽量級なみの速度で動くことができた。武器はEOだけになってしまったが。
◆アリーナの敵が賢くなっている。なんと、柱に隠れて攻撃してくる。遮蔽を使うなんていう難しいことをやってのけるAIに、感動もひとしおである。
◆画面構成が多少変更されている。LOCKED表示は画面中央上にでるようになった。AREA
OVER表示は画面中央に出て見やすくなった。重量オーバーで出撃すると、常に警告音が鳴ってうるさい。ロックオンマーカーのよこに、小さなゲージがある。このゲージはどうやらリロードタイムを表しているようである。ミサイルの場合は初弾ロックオンまでの時間を表すようだ。
◆僚機。ミッションには僚機を連れて行けるものがある。僚機は5人のパイロットから選ぶことができる。連れて行くと、ミッション中に「さすがだな」とか声をかけてくれる。スタッフの話では、シナリオが先に進むとパイロットがACに乗り換えたりするらしい。
◆アリーナには、キングスフィールドIVにそっくりなステージがある。名前は「廃墟」だそうだ。ミッションで出てきたら、まっさきにムーンライトの存在を疑わねばなるまい。また、アリーナトップの名前は「エース」。AC名は「アルカディア」である。アルカディアはないだろうアルカディアは?
さて、とりあえず今回感じたのはこのくらいだろうか。あとは後藤と話したりして、いくつか情報を仕入れたりしてみた。
株式会社フロムソフトウェア営業部、後藤
「実はこれ、まだバランス調整してないんですよ。これから一週間ですね。次の大阪の試遊会ではちゃんとバランス調整されたバージョンを持ってきますよ」
なんてこった。それは来週が開発のみなさんにとって地獄週間だと言っているわけだな。なんて残酷な男なんだ後藤。そんな台詞をにこやかに言ってのけるなんて。そんな残酷なお前は今日からクルーアル後藤と呼んでやる。
質問者
「あのう、ユーザーからの要望っていうのはどのくらい取り入れてるんですか?」
クルーアル後藤
「うーん、できるだけ入れようとは思ってますが。やっぱりほら、取り入れすぎると大変なことになるでしょ? 羽を出せとか、おっきいハンマーを出せとかそういうことになるじゃないですか。だからちょっとねえ」
そんな馬鹿な。やっぱり意識はしてたんだなアレを。なんてぶっちゃけた男なんだ後藤。そんなぶっちゃけたお前は今日からぶっちゃけ後藤と呼んでやる。
おれ
「前から気になってたんですが、ユーザーの作ったウェブサイトなんかは、社員の方がご覧になってたりしてるんですか?」
ぶっちゃけ後藤
「会社としては、仕事場で見ることは禁止しています。勤務中にファンサイトを見ることはありません。でも家に帰って個人で覗いてる人は結構いるでしょう」
なんか見てるんだか見てないんだかよくわからないよ後藤。とりあえず、公式にファンサイトで出てる意見を採り上げることはありえない、ということでいいのかな。もちろんスタッフの誰かが自宅で見たものを参考にすることはあるかも、と。なんて曖昧な発言なんだ後藤。そんな曖昧な発言をするお前は今日から玉虫色後藤と呼んでやる。
質問者
「そういえばAAの全国大会やるって言ってましたけど、ほんとにやるんですか?」
玉虫色後藤
「えっ、えー? そりゃやりますよ」
質問者
「AC3出た後で?」
玉虫色後藤
「うん。AC3の大会と一緒に(笑) AC3部門とAA部門、とかに分けて(笑)」
ほんとにやるのか後藤。ネタじゃないのか後藤。それならせめてMOA部門も作ってやれよ後藤。というかほんとだったら爆弾発言だよ後藤。よし、そんな爆弾発言をするお前は今日からボンバー後藤と呼んでやる。
こうして体験試遊会は収束へと向かった。AC3体験試遊会というよりは、むしろ後藤体験試遊会といった感じだった。ビバ後藤。株式会社フロムソフトウェア営業部クルーアルぶっちゃけ玉虫色ボンバー後藤。おれはお前を忘れない。またどこかで出会えることを、おれは固く信じている。