[ LN-502 ][ "LN-502" Divelopment Stories ]





★502開発記

『……まず、始めに結論から言おう。
 傑作脚の名を欲しいままにし、軽2脚パーツを使用する多くのレイヴン達に愛され続けている2足歩行型高速脚部501型。それの装甲及び空戦安定性を強化・発展させるべく開発が始められたバリエーション。それこそが今日ここに至るまで「駄っ作」の評価を受け続けた502型脚部である!』

 当初は上記を読んで字の如く「501型の機動力を削ぐ事無く装甲と空中安定性を強化する」というコンセプトであった。開発は順調に進む――筈であったのだが無論世の中はそんなに甘く出来てはいないのである。
 当時の技術力が不足していたこともあり折角新規設計したパーツの起動実験は尽く失敗。莫大にもぎ取っておいた筈の開発予算は次々と失敗する実験に吸い取られていき、見る間に失われていった。
 状況は悪化の一途を辿りどんどん追い詰められて行く中、開発陣は苦し紛れながらもこう考えた。

『既存の501型脚部の関節機構を流用する事に加え、来期発表予定の軽量な新素材を利用した新型複合装甲を使用。尚且つ新設計のスタビライザーを装備する事で当初のコンセプト実現を図れないであろうか』と!

結果は皆の知っての通り、である。

   より優れた重量対耐久性を期待された新型複合装甲は当初の目算よりも遥かに重量が嵩み、その素材によって増加装甲を施された脚部は関節部に501型のものをそのまま流用している事もあり、限界荷重状態において戦闘速度の急速反転をするとすてんと転倒するという事故が多発してしまったのである。
 予定より大幅に増加してしまった全体重量を高速歩行時に支える事が出来ず、それに対する対策の為、止む無く最高歩行速度を大幅に削ぐなどという本末転倒な羽目に陥る始末。


……開発してる物って高速2脚じゃなかったんだろうか……


 それでもまだ高所からの着地時等に於ける転倒の危険性は拭い去る事は出来なかったのである。


……もう兵器としてって言うか工業製品としても駄目な気がする。


 こうなるともう開発陣もやけくそなのか、オマケとばかりに最大荷重限界設定が元になった501型よりも300単位近くも低く設定されてしまう。更に苦し紛れな策まで採られ502は完全に駄作の道を歩む事を余儀なくされて行くのであった……。


 満を持して(?)発売された502型脚部。
 価格の方はというと嵩んだ開発費と501型脚部の機構を流用した事から来る高い製造コスト、そして広告費回収の為に高価格化を余儀なくされるわけなのだ。が、しかし計画段階で出されたキャッチコピーとは大幅に異なる性能のパーツが売れ行き好調になる筈が無く、戦果に於いてもその見事なまでの「駄作性」を遺憾無く発揮。
 価格は下げられる一方で、発売当初80000コーム近かった価格は最終的に半額以下の38000コームまで下げざるを得なくなってしまう。
 生産そのものが停止寸前まで追い詰められる事となってしまったわけなのである』


さてさて……?



「LN−502物語」


『……そんな追い込まれた惨めな状況に追い落とされていく中、502の救世主とも言うべきレイヴンは突如として現れた。偶然シュミレーターで502を試用した或るレイヴンが、その悪くない空中安定性能と歩行時〜ブースト時の速度差から来る乱数加速性能に目を付け、これを購入したのだ。
 そこのガレージのオヤジが彼女に何度も確認を取ったのは言うまでもない。
 そして、現物に換装され組み上がった愛機を見た時、彼女の中で湧き上がっていた疑念――シュミレーター上で仮組み状態の愛機を見た時に感じた感情は一気に確信へと変わった。


「……格好良いな」


 そう、格好が良かったのである。
 高めのヒールを履いた踵部に膝下が長めに設定され爪先まで流麗なラインを描く脚部。翻るマントを思わせる後部スタビライザーとそのスカート状シュルツェン(浮遊装甲)………
 電子戦コア『XCL−01』や試型軽量コア『XXA−S0』と組み合わせたその姿は、小さい頃に皆が憧れたディスクアニメに出て来るヒーローロボットの様そのものだったのである。


「……いける」


 そう実感した彼女は完全に格好を重視し、色も実戦性を完全に無視したグロス塗装の紅と黒、縁取りにはプラチナゴールドという、悪役ヒーローさながらに機体を組み上げたのであった。

 翌日、アリーナは沸きに沸いた。
 その堅実な勝負に定評のあった彼女が、『欠陥脚』の烙印を押された502に換装したというのだから無理もない。
 「勝ちを捨てた」等と罵る輩まで出る始末であったが、彼女はそれら罵詈雑言に耳を貸す事も、意に介す事もなかった。介す必要がなかったと言っても良いだろう。

 その日の試合、彼女は「傑作機」の定評を持つ501型脚部を装備したACと対峙した。
 対戦前の通信で散々嘲笑った501型を駆るレイヴンは試合終了後、激しい後悔に見舞われる事となる。
 彼女が駆る502型装備は先に散々罵ったレイヴン駆る501型からの攻撃を、緩やかな、しかし不思議な機動で尽く躱すと上空から一気に斬りこみ、一撃で葬り去るという見事なまでの大勝利を収めたのであった。
 空中での安定性に欠ける敵機のブレードを嘲笑うかのようにふわりと躱す彼女。
 FCSの追尾機能を利用し一気に斜め横から、しかし真っ直ぐに斬り込んだ彼女のプラズマエッジは見事に敵機の頭部センサーとコアの上面装甲を削ぎ飛ばし、そのまま擱坐させる……。
 スタビライザーを翻し、ふわりと舞い降りたその姿は見ていた者達に不思議な感動と興奮を齎した……』




 そんな容姿に憧れたレイヴン達が502を使い出し、使用人口が一定度まで上がったという。
 有名どころとしては、アンバークラウン・アリーナの6位『ラディウス』なども使用しており、
 LN-502は駄作の評価を受けつつも[格好良い脚部]として語り継がれていくこととなったのである。




バカですわ。ええバカですわよワタクシ。はいそりゃもお。




・……完!