The after

第一章(前哨)
とある出来事から一ヶ月
あたし(梨花)とあの子は出かけていた
そう、修学旅行・・
何が有ったかは知らないがとんでもない事は有っただろう「あの日」ニュースではレイブンズ・ネストが機能停止したらしい
それ以来からあたしの周りからは大混乱が起こった
・・あたしの日常で見れば下らない事だが、社会的には大混乱らしい。
それだけの、くだらない現実・・それがあたしの前の事だ
それから、ACのアリーナ自体変わっていったらしい。
普段のシュミーレーターから現実に起こりつつある所にそれは起こった。
そこから・・あたしたちの人生は変わった・・
そう、あの日から・・

−レイブン達−
「くそったれ!!」
俺は相手を見やってそう言い放った。
何故だ?あいつが言ったはずだ、「アリーナなんて仮想空間での糞の集団だ」と
だが何故現実での市街戦になる!民間人の死者などこちらの計算外だ!!
「だがこちらには好都合だ・・」
さっきまでのクリーンな奴と同じ声がした、続けざまに言い放つ奴の声がこちらには歯軋りしそうだった。
「貴様は他人が死ぬのが許せないのか?レイブンなのに??まぁ、その方が好都合だ。他人を巻き込んで死ね」
再び心の中でくそったれと罵った。
自分自身の怖さもあるが、自分が死ぬのに巻き添えは結構だ。自分だけで良い、俺は決心して相手に話しかけた。
「良いだろう!死んでやるから最後は斬って殺れ!」
こちらには勝算もある・・左手に付けたジャンク製の大型シールドは実弾にはかなりの防御性があり、おまけにブレードまで仕込んでる。
一瞬だけでもいい、タンクならではの右のバズーカを叩き込めれば!奴が挑発に乗ればしめたものだ。

−梨花−
その時だった
AC同士の戦闘が一瞬中断した。
赤いタンク型は学生たちを護るかのように立ち塞がり、相手の黒い軽量ACは攻め方を考えているようだ。
軽量ACの武装は見たところ小型の銃のみ、所が相手にしている赤いACはそれこそどこかのCMに出て来そうなほどの装甲を持ってるであろう
物凄い「ごつい」パーツで構成されている。
いや、装甲が厚いならまだしも左手には恐らく規格に無い大型シールドが目に入る。
何なのだろうと見据えるが、あんなのはACのパーツには無い。恐らくハンドメイドの物だろう。
恐らくそう簡単に破壊されそうじゃないから友人・・そう、唯に目を向けた、その時の唯の声は普通とは違った声で叫んでいた。
「助かりたかったらあたしを乗せて!」

−レイブン−
乗せろだと!?冗談じゃない、現に奴はブレードを使用して空中からの斬撃に入ろうとしている。現状を完全に乗り切るためにはここからが重要だ。
何より後ろの民間人の安否が気に掛かる、「乗せる」なんて選択肢は今現在、無い。
瞬間、相手のACがブレードで斬りかかって来た。蒼い光がモニター越しに確認できる、ムーンライトだ。
やはり奴のブレードはこちらのシールドを物ともせずに切断している、が、ここで負けは無くなったと言っても良い。
こちらはあらかじめセットしたマクロを起動させるだけ・・そう、高熱の光を閉じ込めてる力場を曲げるために仕込んでいた物で機動力の無い戦車ならではの物。
正直これ以前にハンドメイドパーツを使用するのも気が引けたが、今回は役に立ちそうだ。
光軸が交差する直前にマクロを起動させ、こちらも同出力のブレードを展開する。その瞬間、力場同士が衝突して違うベクトルを形成しブレードはあちらの目標とは全く
違った方向に−正確には上45度の角度だが−お互いのブレードに使用している力場が干渉して互いにダメージ無しに持ち込んだ、ここからがこちらの反撃タイムだ。
干渉した瞬間にこちらはシールドを相手に向けてパージする、その瞬間に衝撃で奴の動きが止まった。
 「上手く当たれよ!」
左手の武器を使用しているためFCSは使い物にならない、運良くコアに当たればしめたものだ。
一撃だけのチャンス−俺は正にそれを確信した−が、そうそう上手く話が運ぶはずが無い。こちらのバズーカの弾頭は相手の左手を吹き飛ばすだけに留まった。
コレだけでもしめた物だ、相手の右手武装はHG-1、強力だがそれのみならこちらの撃破は有り得ない。が、こちらにも耳障りな声が聞こえてた。
「地形を熟知してるから、肩のグレネードで撃破して!あたしが武装を担当するから、貴方は脚をお願い!!」
・・正直耳障りだ、が奴は自身の武装を知ってる為か逃げようとしている・・利用するに越した事は無い。
俺はコックピットを空けて話しかけた。
「一撃で殺れるか!?」
正直な所畜生としか言いようが無い、利用とは言えこんな小娘に協力を仰ぐとは、だがこちらに選択肢は無い。観客を冷めさせた責任は取らないとこちらの命が危ないのだ。
乗せながら同じ修羅道を辿らせるのか−俺の頭にそんな考えがよぎった−ハッチを閉めて少女に問いかける。
「どこに回せば良いんだ!」
「90度右!そこの大通りだと丁度ACが出られる大きさのトンネルが有るの!!距離は・・」
「大通りに回すぞ!勝算は有るんだろうな?」
「予想が当たればね!」
狭いコックピットの中で大声で怒鳴りあってる大の大人と方や位であろう娘、ミスマッチ過ぎるぞ・・。やり取りの間に現場に到着する。と、とんでもない事を言い出した。
「FCSはオートをカット!手動にして狙います!!」
「無茶を言うな!当たらんだろうが!!」
お互いの主張で押し問答になる、が子娘は事もあろうか勝手に操作してFCSを手動モードにする。
「飛んでる相手にこんなもの使っても意味ありません!予測計算が誤作動して当たらないだけです!!」
「FCSのシステムを理解してるのか!」
「親もいない身で就ける仕事と言えばMT乗りかレイブンしかありませんから」
さらっと言う、どちらにしろ企業に利用されるか自らの手を血で汚すようなものだ。だが、過去を詮索する余裕はこちらには無い。
思考を閉ざして現状に集中するとレーダーに敵機を捕らえるアラートが鳴る。しまった、ワンテンポ遅れたが火器を弄ってる奴には問題無い様だ。
「ミサイルを警戒するだろうから高度を取るはず、後は・・」
集中してるのか語尾が小さくなっていく、火器管制システムを見るとグレネードを選択している。爆風に当たって何処かに落ちればしめたものだろう。
敵機が肉眼で捕捉できた、その瞬間にトリガーを目いっぱい引く娘−唯と言ったかな、こいつは−の姿が目に入った。
大口径のグレネード弾が見事敵機に命中する、大した感だな。と言いそうになって慌てて止めに入る、着弾した方向のビルに敵機が激突したからだ。
「民間人を殺す気か!」
だが聞いてるのだが頭がこちらに回らない−恐らく初めての殺人なのかトリガーを連打している。
「あっちのビルは解体前の廃ビルなの!問題ないのよ!みんなの仇!」
言いながらただ、そうひたすらにトリガーを連打している。
あんなものを一撃でも喰らえば動きは止まるのだが、それでも攻撃の手を止めない為最早原型を留めていないだろう。
観客の受けは良いだろうが・・もはやACではない只の鉄の塊に弾を打ち込んでいる少女の肩を掴んで言った。
「もういい、奴はもう死んでる」
少女は自分の行為に気が付いたのかびくっとしてこっちを見る。
「終わった・・の?」
「取り敢えず・・はな」
戦い方が不味かった・・自虐の念を込めて俺は言った。

−唯−
終わった・・けどどの位の犠牲が出たのか解らない、只言える事は今乗ってるACとさっき破壊したACがあたし達の日常を破壊した事。
そしてあたし達やここの人たちの日常を破壊した事、乗ってる人は守ろうとしたけど守れなかったこと。
自分でやった事なのに全てが憎かった、だけど最も憎むのがモニター内で狂気乱舞してる観客たちだ。
ステーション・シティにいる人間は何なのか、大都市(アイザック)に居るあなた(観客)達は何様なのか・・だがあたしは別の所に八つ当たりしようとしていた。
目の前のレイブンに。
「あなた達が・・あなた達が居なかったらこんな事にはならなかったのに・・!許せない、こんな事を娯楽にするなんて許せないんだから!!」
彼は自分の行った行為に対してただ一言
「すまん」
こうとしか言わなかった。