ARMORED CORE4 果て無き輪廻
プロローグ
国家解体戦争―――国家の統治能力低下を問題視した企業グループによる人類史上最も大規模なクーデターだ。
このクーデターは、約一ヶ月と言う短期間で終了する。クーデターを起こした企業グループが国家によって鎮圧される事によって―――では無い。寧ろ、企業グループの圧倒的な勝利によって終わった。人型機動兵器アーマード・コアの新型、ネクストによって―――。
そして国家解体戦争から四年後―――。
GAグループとレイレナードグループの対立が深まる中、コロニーアナトリアの財政難と同時に出現したネクスト傭兵。
このイレギュラーな存在により、企業の主導権争いは本格的な武力衝突へと発展し、そして終わった。
レイレナードは有力なリンクスを殆ど失い、共同企業BFFを壊滅させられ、一気に勢力を削られた。
そしてGA側の勝利に終わり、ライバルを失ったGAは急速に発展していった。
そして、更にそれから一年後―――。
廃墟に囲まれた砂地を、一機のACが高速で移動している。
機体の構成は、レイレナード社製のパーツを中心の中量系二脚だ。武装は、右手にはブレードの07−MOONLIGHT。左手には突撃型ライフルであるAZANを装備。背部の右側にはグレネードランチャーのOGOTOを装備している。この一貫性の無い装備は、おそらく傭兵の物だろう。
その傭兵の機体が、砂を巻き上げながら目まぐるしくクイックブーストで動き回る。次の瞬間、一拍前まで居た場所が無数のレーザーによる砲撃を受けた。砂はレーザーの高熱により、硝子状と化す。
発射されたレーザーの軌跡を追うと、そこには四脚系のネクストが居た。武装は、両腕部にレーザーライフルのER−O200。背部には両側にOGOTOを装備している。そして、左肩にはGA社のエンブレム。どうやらGA社のネクストらしい。
「ちぃ・・・・・・しぶとい・・・・・・」
傭兵機体を操るネクストパイロットの青年は思わず愚痴る。たかだかGAの研究施設を潰すだけで、ここまでの追撃を受けるとは思っても見なかったからだ。しかも、今回は閉鎖空間での鎮圧戦闘を考慮していた為、ネクストに対して使うような武装は装備してきていない為、焦りは余計に募る。
と、その時不意に通信機から声が聞こえてくる。
「交渉成立です。この敵を撃墜すれば報酬上乗せです。とっとと撃墜してください」
女性の声だ。声の質からして年齢はまだ20代中盤だろう。
その女性の声に対して、傭兵機体のパイロットの青年が殺気を込めて抗議する。
「お前はさっきから俺のサポートもせずに報酬の上乗せ交渉してやがったのか」
「はい。このような好機、中々無いので」
女性の事務的な声は、淡々と事実を告げる。
「ちっ・・・・・・戦場に立たないからといって呑気な・・・・・・了解した。これより敵ネクストを撃破する」
青年は、呆れたように言い切ると同時に、通信素子を遮断。
そして、又もや放たれたレーザーを避けると同時に一気に機体をクイックブーストで反転させ、背部のグレネードの照準を、敵に合わせて発砲する。
発射されたグレネードは、敵の意表を突けたからか勢いよく機体に飛んでいく。が、機体に直撃する直前でグレネードが光の壁に当たって爆発した。
光の壁―――プライマルアーマー。コジマ粒子を機体外に噴出させて形成する一種のバリア。このプライマルアーマーの前には、実弾であろうがプラズマであろうが無効化されてしまう。唯一効果が低いのはレーザーだが、プライマルアーマーに減衰される事は変わらない。
だが、プライマルアーマーを貫通させて攻撃するだけが全てではない。例えば―――そう。今のグレネードのように着弾と爆風などで減衰させてから攻撃する事もある訳だ。
プライマルアーマーに着弾した弾と、それに伴い一気に広がった爆風で、四脚型のACのプライマルアーマーは一気に削られ、更に視界も悪化する。
四脚ACは、その状況から逸早く脱出しようと、クイックブーストで一気に前に出る。次の瞬間、四脚ACのパイロットは、視覚素子に巨大な黒い物体を発見。その黒い物体―――パージされたOGOTOは、避ける間も無くプライマルアーマーに激突して、大爆発を起こし、プライマルアーマーを完全減衰させる。更には爆風の勢いと巻き上がった砂により、視界及びレーダーが全く役に立たなくなる。
次の瞬間、その爆風の中にオーバードブーストで傭兵の機体がレーザーブレードを出力させて突っ込んで来る。
そのブレードは、真直ぐとコアに向かい、貫通する。
ネクストは一瞬でカメラから光を消し、崩れ落ちる。
傭兵の青年は通信素子を復帰させて告げる。
「敵ネクスト撃破完了。輸送VTOLを向かわせろ」
「了解しました。直ちに向かわせます。任務、ご苦労様でした」
女性の声は最後まで事務的だった。