ＡＲＭＯＲＥＤ ＣＯＲＥ４ 果て無き輪廻
第２話
「全身のバランスセンサー調節・・・・・・スタビライザー装着箇所をリストアップ・・・・・・神経伝達経路の変更・・・・・・こんなもんか」
プログラムの構築を終えたガナッシュは、ノートパソコンから顔を上げて整備ベットに横たわる新品同様のレイレナード標準機に目をやる。
先ほど聞いたが、ジャンク屋の掘り出し物で新品の標準機があったそうだ。レイレナードが壊滅した今、普通有り得ない事なのだが。
「まぁいいか・・・・・・」
今回は前の装備での不具合を考えて、自らの戦闘スタイルにあった装備に変更してある。
まず、右腕には０７−ＭＯＯＮＬＩＧＨＴを装備。左手には、レイレナード社製の強化型マシンガン０３−ＭＯＴＯＲＣＯＢＲＡ。右の背中には軽量プラズマキャノンのＴＲＥＳＯＲを装備している。つまり、装備は全て標準機に搭載されていた武器の改良型と言う訳だ。
ブースターも変更してあり、接近戦時の為にメインブーストはＳ０４−ＶＩＲＴＵＥ。バックブースターは、ＥＮ効率を考えてＢＢ１０３−ＳＣＨＥＡＴ。サイドブースターには、近距離での連続移動で死角を取る為にＡＢ−ＨＯＬＯＦＥＲＮＥＳ。オーバードブースターは全く使用しない為、ＫＢ−ＪＵＤＩＴＨを装備している。
今回は前の機体の様に火力重視ではなく、近距離戦闘仕様の高機動型ネクストに仕上げてある。
「此方の方が戦闘しやすいかな・・・・・・前のより速さがあっていい」
「特尉！ 機体のプログラムを送ってください！ こちらで最終調整をします！」
「判ったっ！ 今送る！」
新人の整備士に催促され、ガナッシュは慌ててデータを転送する。
と、その時突然キャットウォークに警報が鳴り響き、同時に緊迫した声が聞こえてきた。
『現在所属不明のＡＣがコロニーに接近中。今から出れば戦闘区域を生活圏まで広げなくて済みます。ガナッシュ特尉はすぐ迎撃に出てください！』
「っ！？ 整備員！ プログラムのコンバートは終わったかっ！？」
思いもしなかった凶報に驚きつつ、ガナッシュは機体状況の確認を取る。
「は、はいっ！ 終わってます！」
「なら全員退避だっ！ すぐに出るぞ！」
パイロットスーツを既に着込んでいたガナッシュは、キャットウォークを駆けて機体に乗り込み、起動させる。
「特尉、整備員の退避は既に済んでいます。すぐに出てください」
「判ってる！ 出るぞ！ ハッチ開けろ！」
開放された格納庫のハッチから、ガナッシュは急ぎ機体を発進させた。
「敵機接近、距離１３０５。衛星画像の分析終了。どうやらローゼンタール標準機のようです。敵機後方にノーマルＡＣの一個小隊を確認。接近中です」
「ローゼンタールの標準機にＡＣ一個小隊？ こんな戦力で襲撃するのも変だな？ 一応ローゼンタール機との戦闘画像を取っておいてくれ。自律兵器の可能性が有る」
「同感ですね。了解しました。――――――接敵、向こうの射程内に入ります」
その報告とほぼ同時に、一拍前まで居た自機の真横にライフル弾が降ってきた。ガナッシュはようやく目視できるようになった敵機に神経を集中して、ブーストを全開。一気に接近する。
もう少しでマシンガンの射程距離と言う所で、突然散布型ミサイルＭＰ−２００Ｉが敵機から発射された。
ガナッシュは高速で移動しながら、マシンガンを発射して、３２発のミサイル全弾を迎撃する。
ミサイルの爆風で視界が悪くなったので、レーダーで敵機の機影を探す。
「上っ！？」
咄嗟にガナッシュがバックブーストで飛び退くと、我前にブレードを振り下ろした敵機が落ちてくる。レーザー刃が自由落下の勢いで砂の中に沈みこみ、その熱量で砂が溶け、硝子状になっていく。
「そんな手でやられるかっ！」
ガナッシュは左手に保持していたマシンガンを撃ち、同時に前方へクイックブ−ストで踏み込み、右手の０７−ＭＯＯＮＬＩＧＨＴで斬りかかる。
次の瞬間、敵機は予想外の挙動を行った。オーバードブーストで体当たりしてきたのだ。
そのままガナッシュの機体は捕縛されて、ＭＰ−２００Ｉの至近弾を連続で受ける。ＰＡが一気に減衰し、ガナッシュの頭の中でけたましい警鐘が鳴り響く。
『コロニー側より高エネルギー反応！？ この熱量は・・・・・・レーザー、照射されました！ 回避してください！』
「無茶を言うなっ！」
ガナッシュは装備を全て解除し、バックのクイックブーストを掛けると同時に敵機を蹴り飛ばして後方に逃れる。
次の瞬間、砂漠にレーザーが直撃した。砂がドロドロと溶けて、ガス状になってゆく。敵機は蹴られたショックでか機動を停止していた
『ちっ、外したか・・・・・・ＡＩは堅苦しい動きしか出来なくて駄目だな』
コンピューターがオープン回線で発せられた声を拾う。どうたらレーザーを発射した人間らしい。同時にレーダーに機影が映る。
機体はイグバールベース標準機ベースで、右肩にＥＣ−０３０７ＡＢを左肩にＭＰ−２００Ｉを装備し、左手にはショットガンのＳＨＡＩＴＡＮ。右手にはレーザーブレードのＥＲ−Ｏ３０５を装備。肩には鎌をバックにした髑髏のエンブレムが貼られている。機体カラーは黒で統一されており、その姿はまさに死神だ。
そのネクストから、パイロットの声が聞こえてくる。
「怨みは無いが、これも仕事だ。堕ちろっ！」
敵機が散布型ミサイルとレーザーを連射しながら接近してきた。
ガナッシュはレーザーをクイックブーストで回避しつつ、足元に落ちたマシンガンを拾おうとした。
だが、敵機はショットガンも攻撃に織り交ぜてきて、全く武器を拾う暇が無い。それ所か、武器が損傷して使い物にならなくなってしまった。
「ちっ・・・・・・コロニーから来たって事は裏切りかよ。まぁ、別にいいんだが」
あのコロニーに未練なんてものは無いが、問題はこの丸腰の状態で離脱できるかどうかだ。武器を拾わせない手並みは、どこか手馴れた感じを連想させる。
「そうそう簡単には逃げさせてくれないか・・・・・・」
そう思いながらも、逃げる場所の見当を付ける。確か近くに昔ローゼンタールが所持していたネクストパーツの製造工場があったはずだ。
ネクスト戦争直後から、組織の維持が難しくて破棄したはずだが、逃げるにはちょうどいいだろう。
ガナッシュはそう考えてクイックブースト旋回をして、オーバードブーストを点火する。
「逃がさない！」
後方からオーバードブーストの点火音が聞こえた。
慌てて後方に視覚素子を集中すると、武装をブレード以外全てパージした敵機が映っている。
「不味い・・・・・・」
ガナッシュは思わず歯噛みをする。
もともとレイレナード機とイグバール機では速度差がかなり大きい。無論、イグバールの方が早い。
しかし、先の装備状況のお蔭で速度的には此方が勝っていた。だからこそ逃げれると思ったのに、まさか此処まで嫉妬に追ってくるとは思わなかった。
しかし、同時に製造工場も見えてくる。
「あそこに逃げ込みさえすれば・・・・・・」
と、次の瞬間アラートが鳴り響いた。敵のブレードロック距離に入ったのだ。
「タイミングが早いっ！ くそっ！」
「堕ちろ！」
次の瞬間、同時に様々な事が起きた。
まず、ガナッシュの機体のオーバードブーストがエネルギー切れで緊急停止した。
次に、勢いの乗ったままの敵機がガナッシュの機体を上半身と下半身で真っ二つに切り裂いた。
最後に、ガナッシュの機体の後部ハッチが火薬で吹き飛んで、ドライバーシートが飛び出した。
次の瞬間、ガナッシュの機体が爆発し、オーバードブーストの使用で臨界点に達していたジェネレーターに更に誘爆を起こし、ネクストでは通常有り得ない様なコジマ爆発が起きた。