アーマード・コアZERO
先の任務を終え、輸送ヘリにてトライアルスコアに輸送されるシュベルトゲーベル。
そのコックピットの中。
シヴァ、いや、ルディンは一人瞑想していた。
あの時オレは泣いていた―――
何故―――?
分からない―――
奴らを殺したのはオレなのに―――?
オレの身体がしたのに―――?
EPISODE3
―護りたいモノ―
月面 第二都市 メックウォール スクール寮
「ルディーン?、どうしたのォ?」
そこはルディンの住まうスクール寮の一室。
二段ベッドの上で蹲るルディン。
おもっくそブルーな雰囲気漂うルディンに声をかけるルナ。
しかし返事は一行に返ってこない。
「どうしたんだろ?」
「時々変になるよなぁ、でも次の日になるといつものルディンに戻るんだ。」
ブルーなルディンを気遣う者は誰一人としていない。
なぜなら次の日になるといつものルディンに戻ってしまうからだ。
こんなパターンはコレで何度目になるであろう。
「そう言えばさぁ、ハイン=ラインのAC工場が奇襲されたんだよなぁ?」
「うん、新聞に書いてあった、「犯人はレイヴン」って。
そう言えば・・・・ルディンが前ああなった時も、
フロムナードの施設が奇襲されたとかじゃなかったっけ?」
ルディンはその言葉を聞くやいなや、目を見開いた。
―――その犯人は自分―――
考えるだけでルディンを苦しめる出来事。
ルディンはベッドから飛び降りると黙って部屋から出ていってしまった。
それを追うルナ。
二度続けの扉の閉まる音に同僚達もポカンとしていた。
「どうしたのルディン?、なんか今日のあんた変だよ?」
ルナはその場を去ろうとするルディンの手をつかみ引き留めようと必死になった。
しかしルディンはその手を振り払いまた歩き始めてしまう。
そこし小走りになってそれを追うルナ、その目がルディンの顔をのぞき込む。
「ルディン・・・・?」
そのルディンの表情はまるで別人のようだった。
いつもは花のように明るい表情が今や枯れ落ちた花のようになってしまっている。
コレは確実に正常じゃない。
と、ルディンはその足を一旦止めた。
そして。
「ルナ・・・・」
「・・何?」
「・・もし・・オレがレイヴンだったらどう思う・・・・?」
「ハィ?」
ルナはルディンからの質問に頭を抱えた。
相当深刻なことかと思ったらそんな簡単なこと・・・・
ホントは大声出して笑いたいところだが、今はそんな状況ではない。
そしてその答えを返す。
「もしあんたがレイヴンだったら、ねぇ・・・・
どうだろ、レイヴン嫌いだから縁切っちゃうかも知れないけど・・・・」
「・・・・けど?」
「あんたはあんただから、ルディンは友達のままだよ・・・・?」
「・・・・ありがとう・・・・」
ルディンはその一言だけを言い残すとそのまま黙って去ってしまう。
そんなルディンをルナは追いかけることが出来なかった―――――
月面 第二都市 トライアルスコア
そこはいつものACデッキ。
ルディンは暇となればいつもここに足を運ぶ。
何故と聞かれたら答えは返せない。
ルディン曰く「ここは涼しくて良い」。
・・・・冬は?
「?、どうしたルディン、依頼は来てないぞ?」
っと、前回紹介するのを忘れていた。
彼はルディンのオペレーターである「ラグズ=ハーバッド」。
元レイヴンのベテランオペレーターである。
「いや、なんか暇だからさ。別に行くあてもないし、ここが一番落ち着くんだ。」
「へー・・・・っと、そうだ、お前に届け物が来てるぜ。」
「・・・・オレに?」
そう言ってラグズがルディンに小鼓を投げ渡す。
掌より少し大きいくらいの長方形型のモノ。
それはマテリアクスからのモノだった。
小包を開封すると中にはたくさんのクッションが入っている。
その奥の方にそれはあった。
「これって・・新しいID!?」
「そうだ、今日から全レイヴンのIDが変更されることになった。
今まではカードだったけど、それの方がいいだろ?」
彼らの言うIDとはつまりレイヴンである証明書。
レイヴンに関係する施設などにはいるときは基本的にそれを見せる必要がある。
この施設にはいるときだってそうだった。
今回はカードではなく、厚さ数ミリ程度、長方形型のディスク。
表面にはルディンのエンブレム、「螺旋を組む双龍」が彫刻で彫られている。
「スッゲー!!、めちゃくちゃカッコイイ!!」
それを手に子供のようにはしゃぐルディン。
いや、実際はまだ子供なのだ。
レイヴンではない、一人の少年の時のルディンは―――――
「・・・・それと昨日の戦闘データ、ディスクに保存しといたぜ。
データ保存のディスクはACん中に忘れてくなよ。
誰が見るか分からねぇからな?」
「おっ、サンキュー・・ってさっきから何やってんだ?
パソに向かいッきりじゃねぇか。」
そう言えばそうだ。
ルディンがこの施設に入ってからずっと、コンピュータのモニタに目を向けている。
彼と会話しているその間だってそうだ。
ルディンもさすがに気になり、ラグズの顔とモニタの間に顔を突っ込む。
そのモニタには六角形型の機械が表示されていた。
そのモニタの片隅に記されている単語。
「ExOP−INTENSIFY・・・・インフィニティ?
なんだそりゃ?」
インフィニティと称されたその物体。
ちなみにOPとはオプショナルパーツのこと。
つまりこれはその一つと言うことになる。
しかし、インフィニティなどと言うOPはルディンも聞いたことがないモノだった。
しかもそれのデータをラグズが持っていると言うこと自体よく分からない。
「でぇ、何でこのデータをラグズが持ってるんだ?」
「そりゃあ・・コイツは“オレ”が作ったOPだからな?」
“オレ”が作ったOP=ラグズが作ったOP・・・・
「ちょっと待て・・何でラグズがんなもん・・・・」
ルディンは更にそれを問いつめようとする。
すると、ラグズのコンピュータのモニタがブラックアウトし、
マテリアクスのエンブレムが映し出された。
「来た!、依頼!」
それは月面政治企業ムーンレイズからの依頼だった。
ルディンはラグズの顔を押しのけ、モニタの依頼文章に目を通す。
―緊急の依頼だ。プラント1、第二都市、メックウォールに向かってくれ。
あるテロ部隊がメックウォールに攻撃を仕掛けるという情報を得た。
これは明らかに我々に対する反抗勢力だろう。
至急メックウォールに向かい、テロ部隊を殲滅してくれ。
メックウォールには学生のスクールも数多く点在し、
少年達も数多く滞在しているはずだ。
では、宜しく頼む―
「・・・・!?」
「メックウォール・・お前のスクールがあるところじゃあ!?」
そう、メックウォールとはまさしくルディンのスクールがある場所。
それだけじゃない、そこにはルナや同じスクールの同僚がいる。
そんなルディンにこの依頼に対するこたえは一つしかなかった。
「ラグズ!、すぐにシュベルトゲーベルの準備してくれ!!
すぐ出撃できるようにするぞ!!」
「・・・・OK!!」
月面 第二都市 メックウォール スクール寮
「もしもし・・・・ルディン?、どうしたの?」
そこはルディンの住まうスクール寮。
その一室にいたルナは電話を受け取った。
ルディンからの電話だ。
―ルナか!?、今どこにいる!?―
「今・・寮の部屋にいるけど?」
―すぐそこから離れろ!、第三都市に向かうんだ!!―
「第三都市・・何で?、別に何も・・・・」
―良いから早くしろ!!、そこに―ブツッ―
「・・・・切れちゃった・・どうしたんだろ?、ルディン・・・・?」
「クソッ!、配線が切れた!!」
ルディンはシュベルトゲーベルのコックピットの中からルナに電話をしていた。
そのシュベルトゲーベルは輸送ヘリに運ばれている。
「ラグズ!、メックウォールの状況は!?」
―まだ敵は現れてない!、それとメックウォールに避難警告が出た!
これで住民への被害は何とかなるはずだ!―
ラグズが状況を報告する中、ルディンは敵が現れないことを願うだけだった。
なぜならあそこには自分の親友たちがいる。
そしてあそこにはルナが―――――
その時、無線をつないだラグズから最悪の言葉が発せられた―――――
―ルディン!!、MT部隊がメックウォールに進入した!!―
「・・・・!、パイロット、聞こえるか!!?」
ルディンは突然無線を開き、輸送ヘリのパイロットに怒鳴りつけた。
―ザッ―なんだ!?―
「すぐにACをパージしろ!、時間がないんだ!!
っつーか、このヘリ遅ェッ!!」
―そんなこと出きるか!、命令違反になる!!―
「そんなことで迷ってる内にお前の身体が吹っ飛ぶぞ!!」
ルディンのシュベルトゲーベルのマシンガンがコックピットをとらえる。
さすがにここまでされたパイロットも遂に・・・・
―・・・・分かった、後はお前の判断に任せる!―
パイロットは無線を切り、そのままシュベルトゲーベルをパージする。
そして―――――
「待ってろォォッ!!、ルナァァァァッッ!!!!」
ルディンはシュベルトゲーベルのオーバードブーストを起動させる。
吸収されたエネルギーを一気に放出し、
シュベルトゲーベルはプラントの空を飛び去っていった―――――
月面 第二都市 メックウォール
戦場―――
それ以外のたとえがなかった。
そこは住宅やスクールがあった場所。
学生達が授業を受けているはずの場所。
しかし今のそこは違う。
ムーンレイズとテロ部隊のMTが互いに銃を向け合い、
“殺し合い”と言う行為を行っている。
ムーンレイズはテロ部隊の殲滅と共にこの区域の人々を守るため。
テロ部隊はこの区域の崩壊のため―――
それぞれの思いがどう強かろうが、
被害を受けているのはこの区域に住む人々なのだ。
それを知ってか知らずか、双方とも攻撃を止めない。
優勢だったのはテロ部隊だった。
ムーンレイズのMTも残りわずか。
テロ部隊の勝利と思われたその時―――――
ドガァッ!!!!
上空からのグレネードがテロ部隊のMTに直撃した。
突然の不意打ちに、テロ部隊は上空を見上げる。
そこにいたのは一体のAC、ルディンのシュベルトゲーベルである。
シュベルトゲーベルは重力に身を任せ、地面に着地する。
凄まじい反動と共に辺りの瓦礫が宙を舞う。
「よくもオレの街を・・よくもオレの学校をォォッ!!!!」
コックピットの中、ルディンは怒りに満ちあふれていた。
ルディンは再びレバーを強く握る。
まるで獲物を狩るかのようなルディンの目、狙いはテロ部隊のMT―――――
だが、その瞬間、ルディンの目には信じられないモノが写り込んでいた。
人である。
スクールの制服を着た、自分と同じスクールの生徒が。
「なっ・・まだ人がいるってのか・・!?」
すでに戦闘は始まっていた。
警報もその地区に鳴り響いている。
それを確認してムーンレイズは戦闘を始めたはずだ。
それなのに人が残っているなんて―――
「これじゃ・・迂闊に動けねぇじゃねぇか・・・・」
焦りと苛立ちがルディンを襲う。
ルディンの頬には一筋の汗。
それを拭うと、ルディンはレバーを握った。
テロ部隊からの攻撃はなく、一触即発の空気が流れていく。
そして―――――
ガガガガガガッッッ!!!!
テロ部隊MTからの攻撃が始まった。
無数のマシンガンが、シュベルトゲーベルを襲う。
しかし、シュベルトゲーベルはそれを回避することなく、全段直撃した。
装甲に弾丸の傷がくっきりと現れる。
「避けるわけには行かない・・避けたら被害が増えるだけだ・・・・!」
シュベルトゲーベルが攻撃を避けると言うことは、
流れ弾がどこかに直撃すると言うこと。
しかし、これ以上の被害を増やすわけには行かなかった。
しかもまだ避難民がいる。
攻撃以上に回避することは難しいのである。
「クッ・・ソォォッ!!!!」
ルディンの手に握られたレバーが動く。
それと同時にシュベルトゲーベルのブーストが火を放つ。
シュベルトゲーベルは避難民から遠ざかるようにして移動していった。
テロ部隊の注意をこちらに引こうとしたからだ。
その思惑通り、テロ部隊はこちらに旋回し攻撃を加えてくる。
「お前らここをどこだと思ってる・・・・!?」
シュベルトゲーベルが瓦礫の合間をブーストダッシュし、
敵MTに接近していく。
そして!!
「戦場じゃねぇんだぞォォォォッッ!!!!!!??」
ガガガガガガッッッ!!!!
ザンッッ!!!!
シュベルトゲーベルのマシンガンがMTの装甲を蜂の巣にし、
間髪入れず放たれたブレードがMTの胴体を真っ二つに切り裂いた。
そこは丁度コックピットが設置されていた部分。
パイロットは確実に死んだだろう。
「ここは戦場じゃねぇ・・オレたちが・・・・
みんなが勉強したりするトコなんだぞ・・・・!?
それを・・・・!!」
素早く旋回するシュベルトゲーベル、
そこの矛先は未だにムーンレイズ部隊と戦闘しているMT。
ブーストダッシュで接近したシュベルトゲーベルのブレードから、
再び青白い光が出現し―――――
「いい加減にィィッ!、しろォォォォッッ!!!!!!」
シュベルトゲーベルの右側にいたMTをブレードで切り崩し、
そのままの旋回で、左側にいたMTにマシンガンを撃ち込む。
どちらもムーンレイズとの戦闘で装甲が脆くなっていたらしく、
一瞬にして爆発四散していった。
コックピットの中、ルディンの息はかなり荒い。
と―――
―敵機の増援が確認された!、オイ!、聞いてるのかシ・・・・!?―
ルディンの装着するヘッドフォンにラグズからのオペレートが届く。
しかし、ルディンはそんなことに耳を貸してはいない。
それ以上にラグズが驚いたこと、それは―――
―ルディン、敵機の増援が確認された、気を付けろ!―
「分かったッ!!」
コックピットのルディンを監視するラグズのモニタ。
そこに写っていたのは“シヴァ”ではなかった。
只、「壊すだけ」のシヴァとは違う、「守るため」に戦うルディンの目。
そしてラグズは確信した。
「今のコイツはシヴァではなくルディンだ」と言うことを。
もし、今のルディンがシヴァだったら避難民に構うことなく戦闘を続けていただろう。
だが、ルディンだから出来たこと。
一人のレイヴンでなく、一人の人間としてルディンは戦っているのだ。
「こっちも全力で戦いてぇトコだけど・・・・
まだ人がいたらァ・・・・!!」
歯がゆい気持ちで、敵の攻撃を回避しつつ、攻撃を加えていくルディン。
その時!!
「!!、ヤッベェッ!!!!」
敵が放ったそれはスモールミサイルだった。
スモールミサイルと言っても脆くなった装甲に直撃すれば決定打になりかねない。
今回ばかりは回避を余儀なくされたルディン。
シュベルトゲーベルは接近するミサイルを回避するが・・・・
「!!、しまった!!!!」
そのミサイルはシュベルトゲーベルの後方にあったビルに激突する。
崩れ落ちるビル、その下には・・・・
「なっ・・・・!!?」
避難民の一団がその下に集まっていた。
このままじゃ下敷きにされるのは間違いない。
シュベルトゲーベルは敵機からの攻撃を無視し、
オーバードブーストで崩れ落ちるビルに向かっていった。
その距離はかなりの距離である。
いくらオーバーブーストと言え、たどり着く距離ではなかった。
それでも助けたい、無駄な死だけは避けたい―――
ルディンはその一心でシュベルトゲーベルを突き動かした。
しかし・・・・
グワラァァァァァァァッッッッ―――――
「・・・・!!」
重力に引かれ落下していく巨大な鉄の塊。
鼓膜が破れそうな轟音と砂煙をまき散らし、地面へと落下していった。
言葉を失ったルディン。
オレのせいで人が死んだ―――――
オレのせいで―――――
やがて、エネルギーゲージは完全に0になり、
オーバードブーストは停止する。
それでもビルにたどり着くことはなかった。
崩れ落ちたビルの前で佇むシュベルトゲーベル。
と―――――
「・・・・!?、バイオセンサーに反応!?
まだ人がいる!!?」
バイオセンサーに反応があった。
まだ人が一人だけ生きている。
ルディンはシュベルトゲーベルを今崩れ落ちたビルの陰に隠し、
機能を停止させ、コックピットハッチを開く。
ルディンはコックピットから飛び降りると、砂煙の中に走り出した。
煙をかき分け、息のある人間を捜す。
いや、捜し出してみせる。
こんな事態になったのは自分の責任なのだから。
ルディンは迷いも、恐れもすて、とにかく奥へ、奥へと進んでいった。
その時―――――
ドンッ
“何かと”、いや、“誰かと”肩をぶつけた。
しかし、こんなところに自分と同じ程度の大きさで、
しかも金属でないモノなど無い。
だが、そんなことを考えることもなく、ルディンは振り返った。
砂煙が未だに立ちこめている。
その中に一つ人影を見つけた。
ふらつきながらも、確実にその一歩を踏みしめている人間の影を。
ルディンはすぐその一歩を踏み出し、“その人”の元へ走り出した。
力尽きたように倒れ込む“その人”。
ルディンはすぐに手を奪い、“その人”を引き寄せた。
「・・・・?」
懐かしい、いや知っている、この香水の香り―――――
まさかと思いルディンは“その人”の顔をのぞき込んだ。
「ル・・ルナ・・・・!」
やはり、そう考えることしか今は出来なかった。
生きていた“生存者”とはルナのことだったのだ。
これを「嬉しい」と言うべきか、「悲しい」と言うべきか。
だがそんなことで迷っている暇はない。
今は一刻も早くルナを助けなければ―――――
ルディンはすでに気を失っているルナを抱え込み、歩き出した。
どんなことがあってもルナは―――――
ルナだけは守りたい―――――
その一心で―――――
―グアァッ!!―ザッ―
ムーンレイス部隊、全滅―――
そこに残っていたのはテロ部隊のMTだけだった。
つまりはこの戦闘はテロ部隊の勝利・・・・に思われた。
ドガガァッ!!!!
大破したMTから沸き上がるスモーク。
その間から二つのグレネードがテロ部隊MTに向かって放たれた。
回避する間もなく直撃を受け大破する二体のMT。
突然の攻撃にMT部隊はその方向に機体を旋回させた。
そして―――――
ガガガガガガッッッッ!!!!
ズバァンッッ!!!!
マシンガン、それに続くエネルギーウェーブ。
それによってまた二体のMTが大破する。
すでに残されたのは三体。
テロ部隊パイロットにも焦りの色が伺えてきた。
敵機はどこに?
どこから攻撃してきた?
次はどこから?
パイロット達の考えは皆同じである。
そして、次の瞬間―――――
ドガァッ!!!!
グレネード、それは上空から放たれたモノだった。
直撃したMTがまた一体大破する。
そして凄まじい轟音と、砂煙と、鉄くずをまき散らし落下する巨大な物体。
AC、シュベルトゲーベル―――――
ヴゥオォン―――――・・・・
シュベルトゲーベルのデュアルカメラが点灯する音が響く。
向けられたデュアルカメラの先には―――――
―ヒイィッ!!?―
「コイツはお返しだ・・受け取れッ!!」
肩の装甲が上下に展開する。
その内部から一つの物体が射出され、二体のMTの前に落下した。
そしてシュベルトゲーベルは素早く旋回し、
オーバードブーストでその場を離脱した。
そして―――――
ドグァァァァァァ―――――・・・・
凄まじい爆音と燃え上がる炎、ナパームボムである。
大したラジエータを持たないMTならばすぐにオーバーヒートで自爆するだろう。
そう踏んだルディンの戦法だった。
その思惑通り二体のMTはオーバーヒートで自爆していく。
それでも炎は絶えることなくもえ続けていた―――――
「にしても・・一番被害増やしたの、オレかもなァ・・・・?」
ルディンはコックピットの中で呟く。
その視線の先には―――――
「ルディンは私たちのこと助けに来たんでしょ・・・・?
これぐらい・・私だったら許すけどな・・・・?」
ルディンの膝の上に座り込むルナの姿。
そのルナはルディンがレイヴンであることを攻めたりはしなかった。
あんなにレイヴン嫌いだったのに―――――
ルディンは安心したような表情でシュベルトゲーベルを操作していた。
と―――――
「ルディン・・・・?」
「?、ん・・・・」
ルナの言葉に振り向いたルディン。
するとルナはルディンの首に手を回し、顔を引き寄せ互いの唇を触れ合わせた。
最初は動揺していたルディン、しかし―――――
「(・・・・良いか・・こういうトコが好きだからな・・オレ・・・・)」
ルディンはとりあえず抵抗せずに過ごすことにしていた。
いや、“抵抗したくなかった”がルディンの本心だろう。
ルディンは機体の機能を一時ストップさせ、
シュベルトゲーベルをその場に停止させる。
これでラグズから通信が入ることもない。
外から侵入されることは・・・・あるか(笑)。
それを考えることもなく、ルディンはルナの背中に手を回した。
そんな二人を気遣うことなく、月面の都市に夜が訪れる――――――
月面 第二都市 トライアルスコア
「ご苦労ルディン!、今日ゆっくり休めよぉ!」
「分かったぁ!」
コックピットから顔を出すルディンにラグズが大声で言う。
確かに今日は大仕事だった。
一見簡単そうな任務だったが場所が場所だけに、
多大なる疲労を喰らってしまったらしい。
おまけに・・・・
「もう出て良いかな・・・・?」
コックピットの中にルナを入れてしまった。
実際レイヴン、もしくはレイヴン関係者以外の人間を、
コックピットに入れることは違法行為になる。
よって今はルナを隠しつつ、寮に帰ることに集中していた。
すると。
「それとルディン!!」
「な・・なんだぁ!!?」
「ガードマン黙らせとくからその子、早く寮に返してやれ!!」
「エ゛ッッッッ!!!!!!??」
ラグズはすでにお見通しだったようだ。
流石、元レイヴン、侮れん・・・・
「〜〜〜じゃ・・そっち頼むわ!、オレすぐ帰るから!!」
ルディンはラグズに大声で言うと、
了解したようにルディンに親指を立てて合図した。
「よし、行くぞ。」
「うん。」
ルディンの言葉にルナは小さく応える。
シュベルトゲーベルに隠れるようにして二人は階段を駆け下りていった。
丁度他のレイヴンはいない。
今がチャンス、とルディンはルナの手を握ったまま走り出した。
しかし・・・・
「(ラグズ・・いねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!??)」
ガードマンを黙らせると行ったはずのラグズがいない。
いるのは検問で厳しく目を見張っているガードマンだけである。
一旦足を止めたルディンとルナ。
最悪の状態、そしてルディンは・・・・
「!!!!??」
突然、ルディンはルナの肩に手を回す。
突然のことに驚きを隠せないルナ。
しかしここはとりあえず黙っておくことに・・・・
そして大きく深呼吸し、ゆっくりと歩き出すルディン、そしてルナ。
このまま出れば無視してくれるだろ・・・・
そう思いながらルディンはガードマンの前を通り過ぎようとした。。
しかし・・・・
「おいルディン。」
「?・・な、なんだ?」
「その女誰だ?、部外者にしか見えないんだが・・・・」
「コイツか?、コイツはなぁ・・・・」
当然のように見掛けない顔のルナに突っかかるガードマン。
ここは何とかせねば、とルディンが頭を悩ませる。
そしてルディンの口から出た言葉は・・・・
「コイツはオレの“女”だッ!」
「(!!!!!!!!????)」
ルディンの信じられない言葉に、ルナは暫し動揺した。
しかしここで動揺しているのをガードマンに見られたら疑われてしまう。
今回もひとまず黙っていることに・・・・
「おぉそうかぁ!、このカギャア憎いことするじゃねぇかぁ!?」
「ヘヘッ、オレももう18だからな♪
じゃ、また明日辺りに来るからな。」
「おう、じゃあな!」
やけに機嫌のいいガードマンはルナを疑うことなく、
そのままルディン達を通してしまった。
大きなため息を付くルディンとルナ。
とりあえずと言わんばかりにルディンとルナは、
ガードマンの目の届かないところに身を隠した。
すると・・・・
「ちょっとルディン!、何で私があんたの彼女になってるのよ!」
「んじゃあそこでなんて説明すりゃ良かったんだ!?
兄妹?、家族?、レイヴン仲間?、どれもつり合い取れねぇだろ!?」
「だからって・・何で私が・・・・」
恥ずかしいのか、悲しいのか、ルナの顔が赤くなっている。
するとルディンは・・・・
「・・オレの・・・・」
「?」
「オレの彼女じゃ・・なんか不便なのかよ・・・・?」
ルディンの言葉にルナは恥ずかしくなってしまった。
「オレの彼女じゃ不便なのか」ってセリフは普通に付き合っている男が言う台詞だ。
もちろんルディン本人もルナと付き合っているとは思ってもいないだろう。
ルディンはそのまま帰ろうと、ルナに背を向けた。
すると。
「あのさ・・・・?」
「?」
ルナの小声がルディンに向けられた。
何とかそれを聞き取ったルディンはルナに振り返る。
「一つ・・“依頼”していいかな・・・・?」
「い・・依頼ィィッ!!?」
ルナの言葉にルディンは突拍子もない声で良い返してしまった。
普通レイヴンに対する依頼は大体企業、時々レイヴンから来るモノ。
それが一般人、それもルナのような高校生が、
レイヴンに依頼するようなことがあるのか。
と言うか、それがしっかりした依頼なのかどうかする疑問となる。
「・・・・で、どんな依頼だ?」
一応、そう言うような顔で依頼を聞くルディン。
「依頼・・って言ってもお願いに近いんだけどね。
ルディン・・私と・・・・」
「・・・・と・・なんだ?」
ルナの言う依頼、いや、お願いがルディンに告げられる。
それは・・・・
「私と・・付き合ってくれないかな・・・・?」
「・・・・ハィ?」
ルディンへのルナからの“お願い”とはルディンと“付き合う”と言うことだった。
その信じられない言葉に暫く固まっていたルディン。
そして大きな深呼吸をついルディンは頭をかきむしりながら・・・・
「〜〜〜まぁ・・その依頼は“契約する”ってことにしとくか。」
依頼を“契約する”、つまり、ルナと“付き合う”と言うこと。
その言葉を聞いたルナは、なにも言わず、ルディンの胸に飛び込んでいった。
顔が赤くなってきているルディン。
明日からが大変だ、そう思いながら―――――
「(そう言や・・・・ラグズどうした・・・・?)」
あとがき
疲れた・・・・かな。
今回は結構長かったからなぁ・・・・
第二話の二倍くらい。
二つにわけて自分で着に普通の多さです。
マジで二つにわけるべきだったか・・・・?
まぁ、今回は色々進展があったってことです。
とりあえず今回はこの辺りで。
次回は戦闘シーン無いってことにしてください(ぉ)。