アーマード・コアZERO










月面の都市に朝が来た。

いや、正しくはドームの天上全体を包むサテライトパネルが、

太陽の光を人工的に調節し朝日を作り出しているのだ。

そしてそこは月面第一プラントの第二都市。

ハイン=ラインのAC支部があるフィールド、

そしてシヴァの作戦領域となるフィールド―――――

―作戦領域に入る、ACをパージした後、すぐ行動を開始しろ

 お前の戦いぶり、今日も拝見させてもらうぜ―

「了解・・・・!」

オペレーターからの指示に小さく言い返すルディン。

いや、ここではあえてこう呼ぼう、シヴァと。

シヴァのその言葉には凄まじいほどの殺気がこもっていた。

そして―――――

「さぁ・・行くぞ!!」

シヴァのAC、「シュベルトゲーベル」が輸送ヘリから切り離される。

第二都市の大地にシヴァとACが着地する。

立ち上がる砂煙。

シュベルトゲーベルはオーバードブーストで作戦領域中心部に向かった―――――










EPISODE2

     ―その名は“シヴァ”―










月面 第二都市 ハイン=ラインACパーツ開発基地



―たっ、助けてくれェッ!!―ザッ―

シュベルトゲーベルのコックピットに“何者か”の叫び声が響く。

断末魔の叫び声―――シヴァが今、撃破したMTのパイロットである。

敵機MTやACのパイロットの通信は自然と自分のコックピットにも流れ着く。

その叫び声の中、シュベルトゲーベルはただ、敵に突進していった。

逆間接MT「ディオマーズ」の機銃がシュベルトゲーベルに向けられる。

乱射される弾丸が装甲と接触し、無数の火花を上げる。

それでも動じることのないその様相に、

ディオマーズのパイロットも恐怖を覚えたのかMTを後ずさりさせた。

戦略的なモノではない、本当の恐怖感―――それがパイロットをそうさせた。

グングンとディオマーズに接近するシュベルトゲーベル。

そしてその距離がゼロに近づくこうとしたその瞬間―――――

ザンッッ!!!!

左腕のブレードが青白い光を放ち、唸りを上げる。

ディオマーズは機銃とコックピットをえぐり取られ、そのまま制止していた。

断末魔の叫び声など聞き飽きた―――シヴァはそう考えている。

残忍、冷徹、悪魔、今のシヴァにはその言葉が相応しい。

人を殺すことになんのためらいを持たない。

それは自分でも分かっていた。

だが―――――



そうでもしない限り―――――



自分自身を見いだせない―――――



なぜなら―――――



“ルディン”と言う顔は偽物だから―――――



「ウ・・・・ウォォォォオオオオッッッッ!!!!!!」

コックピットの中で突然叫び出すシヴァ。

それに反応するかの如くシュベルトゲーベルのコア後部のハッチが開いた。

その中に光が吸収されていく。

そして一気に放出されたエネルギーは機体を高速で移動させた。

目の前にはディオマーズの部隊、敵機数はすでに数えきれる数ではない。

ならばと言わんばかりに、シヴァはレバーを数回動かし武装の変更を行った。

右腕武装から、左肩武装、マシンガンから、携行グレネードへ――――

ドガァッ!!!!

携行グレネードの銃口が火を噴く。

巨大な弾頭はディオマーズの一気に直撃し、

周囲にいた二体のディオマーズともども破壊してしまった。

それに唖然としているパイロット達。

そしてパイロット達が我に返ったその時―――――

ガガガガガガッッッ!!!!

シュベルトゲーベルのマシンガンが弾丸を発射した。

前列にいた二体、流れ弾を喰らった一体の装甲に弾丸が食い込む。

ザンッッ!!!!

ブレードウェーブ、それがディオマーズに直撃した。

いくら遠距離からのブレードウェーブと言えど、

マシンガンで脆くなった装甲には一撃だ。

ましてや、最強のブレード、「月光」によるブレードウェーブなら尚更である。

爆発するディオマーズ。

そしてシュベルトゲーベルに機銃を発砲する部隊。

シヴァの目にはあらゆるモノが写っていた。

全てのそれが自分がさせたモノ。

爆発するディオマーズも、発砲する部隊も。

それがどれだけ恐ろしかったか―――シヴァの身体の震えは止まらなかった。

自分の力に恐れているのではない、この戦場にある全てを恐れているのだ。

その時、シヴァはこみ上げてくる何かを押さえ込むことは出来なかった。

―――破壊―――

ただ、目の前にいるそれを破壊するだけ、それが間違っていようが。

今のシヴァにはそれしかできない。

今のシヴァにはそれしかない。

今のシヴァには―――――










雨―――――

一粒の雨がシュベルトゲーベルの装甲を打った。

シュベルトゲーベルの周辺には崩れ落ちたディオマーズの残骸。

崩壊したハイン=ライン基地。

やがてその雨は激しさを増し、豪雨となる。

それでもシュベルトゲーベルは全く動かない。

カメラにライトを灯したまま―――シヴァを乗せたまま―――――

「・・・・来た。」

シヴァが小さく呟く。

するとモニターには小さな影が映っていた。

その部分が拡大される。

写り込んでいた影、それは二体のAC。

無脚の青いACに四脚の黒いAC。

どちらもハイン=ラインの回し者だろう、シヴァはそう位置づけしていた。

どちらにしても・・・・

―――敵―――

コックピットの中でシヴァがレバーを握る、

シュベルトゲーベルのカメラの光が強みを増す。

[敵機識別信号確認

 AC・ワイルドシーカー

 識別不明AC]

ワイルドシーカー、その名前には聞き覚えがあった。

いつしかムーン=アリーナ内で完膚無きまでに破壊したACの名前。

いわゆる雑魚。

―ザッ―いつしかの仕返しでもしてやるか、覚悟しな!―

そのセリフ、これで何度言い捨てただろうか。

戦場でたびたび会うこいつはいつもこのセリフを吐き捨てやがる。

いい加減慣れてきたがやはりうざい。

ならばいっそのこと殺るか、とシヴァがレバーを強く握る。

先手必勝、シュベルトゲーベルの携行グレネードが火を噴く。

着弾する弾頭、それはワイルドシーカーの少し手前で爆発を起こした。

デコイだ。

ワイルドシーカーの射出したデコイが縦となり、グレネードの直撃を防いだのだ。

コックピットの中で余裕の笑みを浮かべるレイヴン。

しかしその余裕も長くは続かなかった。

ザンッッ!!!!

「!!?、!!」

それはあまりに早すぎて何が起こったのか判断できなかった。

グレネードの爆炎の向こうから青白い光が現れ、

ワイルドシーカーのマシンガンを破壊した。

シュベルトゲーベルのブレードだ。

グレネードの直撃を防ぐための戦法、それは何度も戦ったシヴァがよく分かっていた。

それを見越しての作戦だったのだ。

グレネードの爆炎に紛れ、接近し、切る。

全てが計算された戦術、そしてシュベルトゲーベルの攻撃はまだまだ続いた。

ドガァッ!!!!

グレネードの強烈な一撃がワイルドシーカーの右腕に直撃する。

右肩が完全に崩壊し、残された右前腕がゴトリと地面に落下した。

それと同時にワイルドシーカーの熱量が異常なまでに上昇し続けているのだ。

これがグレネードのなせる技、コックピット内ではレッドランプが点滅し続けていた。

これではうまく操作できることなど出来ない。

そんなワイルドシーカーのコックピットに―――――

「!!?、貴様、何を!!?」

シュベルトゲーベルのマシンガンの銃口がコアに深々とめり込んだ。

装甲が凹み、メカが漏れ出ている。

するとシヴァが―――――

―お前の顔を見るのは・・・・―

「!?」

―もうたくさんだ・・・・!!―

殺気のこもったシヴァの声。

次の瞬間、シュベルトゲーベルのマシンガンが火を噴いた。

無数の弾丸がワイルドシーカーのコアを射抜く。

その弾丸の一部が背部へと打ち抜かれる。

シュベルトゲーベルはその手を止め、ワイルドシーカーから距離をとる。

それに反応するかのように、ワイルドシーカーは爆発四散していった。

「・・これで二度と・・お前の顔を見ることはない・・・・」

瓦礫と化したワイルドシーカーを見て言い捨てるシヴァ。

そして―――――

「?・・・・そうか・・もう一人いたか・・・・」

シヴァの視線はもう一体のACに向けられた。

識別信号では不明扱いされている無脚の黒いAC。

シュベルトゲーベルは方向を転換すると、その黒いACへと向かっていく。

二体の距離はどんどん狭まって来る。

「!?」

先制の攻撃を加えたのは黒いACだった。

右腕に付けられていた携行グレネード。

破壊力はトップクラスに位置する強力なモノだ。

しかし些か重すぎる、それは無脚の利点の一つであろう、スピードを殺していた。

―――――はずだった。

「!!?、!!」

通常の無脚の二倍以上あろうかというスピードで自機の後方に回り込み、

更に一撃加えてきた。

シュベルトゲーベルの右エクステンションがグレネードにより蒸発する。

今の攻撃、何とか回避することは出来たが、

敵ACのスピードに少しばかり驚愕しているのも事実だった。

携行グレネードほどの重量武装を持っていながらのこのスピード。

それはシヴァの予想外の動きだったのだ。

コックピットではレッドランプが点滅し、警告音が鳴り響いている。

シヴァは小さく舌打ちすると武装を携行グレネードへと変更した。

ロックオンのマーカーがコックピットのモニターに映し出される。

そして―――――

ドガァッ!!!!

グレネードが唸りを上げる。

だがそれは、シュベルトゲーベルのモノではなかった。

敵ACの装備していた大型グレネード砲。

まさかこんなモノまで―――シヴァの脳裏に小さな動揺が見え始める。

「だが・・・・そこに勝機がッ!!」

シヴァは残された左エクステンションをパージし、敵ACに接近していった。

幾度となく、グレネードがシュベルトゲーベルに向けられる。

シヴァはグレネードを回避するその事だけに専念していた。

今は攻撃よりも回避。

今までの攻撃で脆くなった装甲にグレネードを浴びせるわけには行かない。

と、次の瞬間、グレネードの発射が治まった。

弾切れだ。

グレネードは威力こそ最強クラスだが、その分弾数が少ない。

その盲点を突いたのだ。

その上、携行グレネードは弾切れ、そしてブレードは装備していない。

今まで以上の攻撃はもう不可能となっていたのだ。

ここまでくればこのACは完全に的。

ブーストを一気に吹かし、ACに詰め寄っていく。

そして二体の距離がゼロの近づいてきたその瞬間―――――・・・・

ザンッッ!!!!

月光が光を放ち、敵ACの右腕を叩き切った。

ゴトリと地面に落下する右腕、遂に完全な丸腰となった。

その時―――――・・・・

―良い腕をしているな・・レイヴン・・・・―

「何!?」

突然、敵ACからの通信が入った。

声からして二十代前半と言うところだろう。

―決着を付けたければ・・アリーナで勝ちあがれ・・・・!

 我ら「セブンズウォーリア」が貴様の相手をしてくれよう・・・・―

セブンズウォーリア、聞いたこともない名がその男から発せられた。

すると、敵ACの肩が展開し、内部から何かが発射される。

そして―――――・・・・

「!!、閃光弾!!?」

それがシュベルトゲーベルに着弾した瞬間、凄まじい光を放った。

モニターは光に包まれ、敵の動きを察知することが出来ない。

ブーストを吹かし、その光から離れる。

しかし、その場にあのACの姿はなかった―――――・・・・

「逃げたか・・・・」

暫くして閃光も落ち着く。

戦場に佇むシュベルトゲーベル。

今も、雨は降り続いていた―――――・・・・





あとがき

なんなんだろ・・コレ・・・・

文章の“アレ”が確実におかしいよ・・・・

ハァ・・・・

もっとうまくなれないモノか・・・・(涙)

訂正後:しかも間違ってたし(泣)