SYSTEMDARKCROW
TRPGリプレイ、創作小説のサイトにして、ARMORED COREオフィシャルサポーターNO.22。管理人:闇鴉慎。ご連絡はブログのコメントまで。
戦いが戦いを呼び
また、闘いが闘いを呼ぶ
それは移ろい行く世に於いて幾つか存在する変わり無き”理”
人は悲しみを捨てられはしない
砂漠の真中に在った都市と緑の真中に在った都市
双方から巻き起こった風に巻かれ、例え目の前が真っ暗になっても人は、生きる
そして、夜。戦場に散った”心”は星になる―――――――
地下都市における一大抗争――大深度戦争が終結して早1年。
尽く、と言う言葉が過言でないほど破壊し尽くされた地下都市は、今や人の住める状況ではなくて、再建すら諦められる程になってしまっていた。
地上への大引越し。
・・・思えば、人っていうのは昔から争ってばかりだ。
いま、ここに来て地球のありがたみを感じたばかりなのに、また争うというのだから、もう呆れる。
だから、いつも私は空を見る。
現実から逃げるために。
いつの日だったかに消えた、あいつを少し忘れておくためにも。
・・・戦車の外板は冷たくて寒かったけれど、なんだか落ち着いた。
ふと視線を空から外すと、隣に歩兵伍長が歩み寄ってきていた。
「よう、寒くないのか?」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・アーマード・コア、名も無い物語――第1話。
彼女は人差し指を立ててこう呟いた。
「あの1つ1つは、今までここから消えて行った心なのよ」
如何しようもなく陳腐で、しかしどこかに陰のようなものが見えるためなのか――不思議と飾り気は感じられない台詞。
口の端を苦笑させつつも、オレは釣られる様にして上を見上げた。
『掬えそうな』と言う表現がピッタリくる程にさらさらと輝く星々。
暫く眺めていると、なるほど。そんな気分になりはしなくもない。
その夢心地な空の代償に、空気は凍りそうなくらい寒く、透き通っている。
オレは、空を見つづける彼女を背中にゆっくりと立ち上がると、あたたかいコーヒーを淹れるべくテントへと向かった。
キンキンに冷えた砂を安全靴で踏みしめ、給湯機のあるテントにたどり着く。
奥ではなにやら、ポーカーに興じて居るらしい仲間達が、歓声や悲鳴を上げて騒いでいた。
灯火管制はまだ解けていなかった様な気もするが、晧晧と輝くランタンを咎める者は誰も居はしない。
偵察隊からの報告でもここ数箇月、敵の攻撃はおろかその攻撃の準備をしている様子すら伺えていやしないのだ。
ただ出方を伺うだけの任務。
そこに加えて敵の動きもないとなれば、緊張しろという方が無理な相談である。
中隊長はそこら辺の融通は利く人間なのでオレ達は大分楽だ。
コーヒーが入ったことを示す橙のランプが点滅し蓋が開くと二人分のカップが押し出されてでてくる。
オレはそれを持つとまだ騒ぎ続けて居る仲間達を尻目に彼女のいる戦車の下へと慎重な足取りで戻る。
「お待ちどうさん」
オレが声を掛けると彼女はゆっくりとした動作で空からオレへと視点を移した。
両手のカップに気が付くとひょうっとステップから飛び降りオレの前へ着地する。
「ん、ありがと」
ふとした時に浮かべる素朴な笑顔。
オレの顔が紅いのは寒さの所為だけではないかも知れない。
カップを受け取った彼女は、両手を温める様にそれを持つとまた満天の星輝く空の続きを見る。
オレはただ冷たさを湛える彼女の”愛車”に腰掛けぼーっとしながら時折、彼女の顔を盗み見た。
正直な話、オレはただただ星輝く空を見つめ続けることの何処が面白いのか分からない。
思いを込めた眼差しで空を見つめ続ける彼女の横に、ただ佇むことしか出来ない。
だが、オレはちょっと幸せだった。
「コーヒー・・・・」
「え?」
オレの呟きを聞きとれなかった彼女が振り向く。
「なに?」
「コーヒー、冷めるよ」
視線から逃げる様に俯いたまま何とか言葉を紡ぎ出すと、彼女はまた微笑んだ。
「そうだね、ありがと」
「・・・・・・」
幾度目かも分からない沈黙。
コーヒーを啜る音すら砂に吸い込まれて行くような感じだ。
静寂が二人を包み込んでしまったかのように、テントからの音すら聞こえない。
ただ、星たちの瞬きだけがそこにあった。
そして、どの位経ったであろうか。
「ねぇ・・・」
突然、視線は変えないまま彼女が口を開いた。
「・・・・・ん?」
「この戦いが終わったら、君は如何するの?」
そんな事を訊いてきた。
オレはちょっと考え込み、溜息混じりにぼんやりと言葉を紡ぐ。
「・・・さてね、レイヴンとかやってるかも」
「ふうん・・・そっか」
何処か物憂げな声に聞こえたのは気の所為だろうか、そんな事を考えるオレに彼女は続けた。
「レイヴンかぁ・・・・あんまりお勧めしないなぁ」
「ん、まぁ適当さ。そこらは。・・・あんたは?」
「私はねぇ”家”が欲しいんだ。帰るとこが」
オレは少し俯くと煙草に火を点けた。肺いっぱいに吸い込んだ有害煙をわっかにしながら吐き出す。
「ま、俺等には一番遠い場所かも知れんがな」
突然隣から降ってきた声に驚いて振り向くと最近配属された一番年嵩の少尉、エヴァンスが何時の間にか立っていた。
視線を戻すと彼女も驚いたような顔をしている。
こちらをちらりと見てニヤニヤと口の端を歪めている。どうやら逢が瀬を見つけたのと勘違いして居るらしい。
オレはちょっと可笑しかった。
「如何したんでありますか?こんなところへ」
「いや、向こうが騒がしいんでな。ちと一服しに」
そういうと、胸ポケットから煙草を一本取り出した。オレのと違ってノンタール・タイプのもんだ。
持っていたライターで火を点けてやる。
「お、すまんね」
彼は胸いっぱいに煙を吸い込み上向きに吐き出す。
「どうして、少尉は”家”が遠い場所だと思うんです?」
彼女は気に掛かっていたのか俯いていた顔を上げると唐突に切り出した。
「ん?、ああ・・・うちらがそれを奪わなきゃいかん存在だからかな」
少尉はそれに動じる事もなく、平然と答える。
「・・・・・・そう、ですよね」
彼女はまた俯いてしまった。
確かにそうだ。
オレ達は兵士で兵隊だ。戦って、相手を殺す為、平伏させる為に、今ここに居るのだから。
「とはいえ・・・確かに、落ちつきたい。そういう気持ちは誰にだって奥底にはあるもんさ」
辛そうにしている彼女を気に掛けてか、そう慰めるように言うと少尉は上を向いて煙を吐き出した。
白い靄が星空へと吸い込まれて行く。
戦場では他愛ない話。オレは時折長くなった灰を落としながら、ただただ沈黙を守っていた。
・・・その後は何でもない話をして、笑って。暫くしてオレ達は冷蔵庫の中のような寝床へと戻っていった。
ほぼ、いつも通りの夜。
翌朝、オレは緊急無線のけたたましい音と、慌しく安全靴で走る足音で目が覚めた。
徹夜で偵察に向かっていた1部隊の無線応答が途絶えたのだ。
そして、重傷を負いながらも辛うじて生き延び、帰還した残り一部隊の隊長も、こう俺たちに告げるなり絶命した。
『――大部隊だ。ビッグ・ガンの、早く、早く退却を――』
訳が分からない。
ビッグガンだと?・・・カタストロフの遺失技術が遺跡から発掘されることは確かに多い。
そうは言っても――こんなちっぽけな――廃墟染みてるだけの場所に展開した戦車の小部隊なんかに、何の恨みがあると言うのだ。
AC迎撃戦と言ういきなりの急展開に驚きを隠せない中隊。
中隊長は必死に命令と号令を飛ばすが、普段の人望が逆方向に手伝ってしまい、さして効果は上がってはいない。
騒然とする本部。
そんな中、ふと横を見ると、自分の戦車に跳び乗り黙々と準備をしている彼女の姿があった。
ジェリ缶を積み込んでいる彼女に、思わずオレは声を掛ける。
「随分と落ちついているんだな」
彼女はこちらを向き、引き締めていた表情をふっと緩ませてこう言う。
「ええ、生き延びたいから。・・・でもあなたも落ちついているように見えるけど」
オレは苦笑する。
「落ちついちゃいないさ。生きたいからな」
彼女はその言葉に少し驚きそして、苦めに笑う。
しかし、多分戦車長に呼ばれたのだろう。
一旦引っ込み、もう1度だけ顔を出すと『ごめん』の合図を手で出して。
そのままローダーズ・ハッチを閉じるとクローラーに砂を噛ませ砂漠へと向かって行ってしまった。
・・・そう。
その時にオレは、ヘルメットとライフルを取りにテントへ向かいながら、初めて神とやらにお願いをしたんだった。
(彼女が―いやみんなが無事『家』に帰れますように)
そう、本気で。
戦場は本部にしている廃墟からろくに離れていない、砂だらけの――字の如くな砂漠だった。
随伴歩兵であるオレ達第1小隊は、対ACライフル(と言っても豆鉄砲に変わり無いが)やら吸着地雷やら、マシンガンをかついでフレッドの愛車に腰掛けていた。
前は荒涼たる砂漠が広がり、後ろは砂埃で何も見えない。
横はオレ達と同じく、歩兵が乗った戦車がずらっと。
左から2番目、赤いポールを付けて先行するのが彼女の愛車だ。
空は飽きれる位に青、と言うよりは白。
現代の戦闘服はある程度環境調節が利くとは言え、まだオゾン層が薄れたままの砂漠では、大して効果を為してはくれない。
顔まですっぽりと覆われたスーツの中で汗が流れ落ちる。
ライフルの砲身を熱垂れから守る為、オレは持ってきた白い布を巻きつける。みんなは微動だにしない。
嫌な緊張だった。
それはそうだ。相手は悪魔の兵器、ACなのだから。
死が始まる。
『それ』への恐怖で狂いそうだった。
きゅう。
となりに座るの少尉が歯軋りをした。
その顔は恐怖、というより怒りに歪んでいる。
「少尉?」
オレは思わず口を開いてしまった。
戦闘行動中だった、とも思ったが過ぎたことなので諦める。
「ん?どうした」
少尉は檄を飛ばさなかった。
オレはそれに安心したのか更に口を動かす。
「何故、怒って居るのでありますか?」
オレの質問にちょっと驚いたような表情を見せるとふっと口元を緩ませ、逆にこんなことを尋ねてきた。
「いや・・・アレン伍長はここの仲間は好きか?」
「・・・?ええ」
事実である。
ポーカー好きのベネット、酔っ払いのフレンチ、火薬マニアのフレッド軍曹。
この隊はみんないい奴らばかりだ。
オレのその返答にエヴァンス少尉はこう続ける。
「オレもみんなが好きさ。だから、昨日の・・・帰る場所の話を思い出してな。それで、さ」
「・・・口惜しい、ですよね」
「そうさ、口惜しいんだ。いざ奪われる側になるとな」
そう言うと、苦笑した少尉は言葉を切り、前方にある丘の一点を見つめだした。
オレも釣られる様にして前を向く。
砂塵だった。
それも一直線に横へと広がる。
オレは布を払い銃のスコープを最大望遠にして覗き込んだ。
砲戦用ACである『ビッグ・ガン』と主力AC『モンスター』の混成小隊、それに随伴車輌の『プリースト』が1両。
恐らく弾薬を積んでいるのだろう。
「来たな・・・」
フレンチがさも憎らしげに呟く。みんなの緊張は最高潮に達した。
相手の進撃が一旦止む。砲撃を開始するつもりなのだ。
折りたたまれた230型榴弾砲が一本になる前に、こちらは出来るだけ、1mでも1pでも近付かなければいけない。
彼女の愛車もそれを見て取ったのか、戦車長が一旦キューポラから上半身を覗かせ手で合図をする。
フル加速。
歩兵を振り落とさないよう出来るだけ直線で、水素タービンエンジンが悲鳴を上げるまで回転数を上げる。
必死にしがみつく。
振り落とされて死んだんじゃ、死にきれはしない。
敵の砲が一本になり始めた。
オレ達の小隊の戦車は、何とか窪地に辿りつくことに成功する。他の隊の事など気に掛ける余裕は無い。
フレッドがクローラを強引に止め、車体を急停止させた。
オレ達は、悪魔の胸にあるミサイル迎撃用光学機銃に撃ち殺される前に飛び降り、取り敢えず壁代わりとなる丘の頂まで走った。
汗で蒸れた肌が摩れる。
寝そべってライフルを展開すると、質量がある物が風を切る音が聞こえ出した。
シャシャシャシャァァ・・・・・・
砲撃が始まったのだ。
何処への照準か、とふと振り返ると第2小隊はまだ向こう側の丘の上である。
ズズン・・・ズズ、ドドドン!・・・ドロドロドロ・・・
丘の上に、寸分の狂いも無く着弾した。
無防備なまま突撃する格好となっていた戦車4、歩兵20の第2・3小隊は瞬きを2回する間に壊滅した。
白く退色した上に煤が乗り、微妙なグレーと黒の迷彩となった車体にさらに赤黒い何かの欠片が見える。
「なんてこった・・・」
俺達の小隊長である少尉が思わずうめく。
これで残ったのはオレ達1小隊と、ノベル曹長が仕切る4小隊だけだ。
これだけで、たったの20人と戦車5両で、あの巨大な悪魔5匹に勝つ。
そんなこと出来るだろうか。
恐怖に暑さも感じない。
汗も流れやしなかった。
やけに重々しく奴等が前進を始めた。
パルスジェネレーターで駆動する、巨大なキャタピラの音が辺りに響く。空きっ腹にくる。
現在敵との距離は2000。戦車戦でも至近距離だ。
オレ達はじっと待った。
奴等の極優秀な熱センサーも、このかんかんな陽射しを十分に浴びた砂の前では流石に使えはしない。
オレ達は目視以外で見つかる事はほぼ無いはずだ。
待つのだ。
この狂いそうな恐怖の中じっと、近付いて、近付いて。
オレ達の持つライフルや指向性地雷でもあの悪魔の堅い皮膚を破れる距離に来るまで。
どんどん機動音が大きくなっていく。
距離、1000。
彼女の愛車――いや、第4小隊「ザ・フールズ」が全力突撃を開始。
凄まじい砂塵を上げ、出せる馬力の全てを振り絞る4つの鋼鐵の棺桶が、そして少し遅れてオレ達の仲間フレッドの愛車が散開する。
それを見て取ったのか、奴等も散開を始めた。
給弾車であるプリーストは既に後退している。
ジグザグに軌道を取って被弾を避ける戦車達。
全力走行でも射撃は余裕ですることが出来る。彼女の愛車の合図を皮切りに、敵の隊列で一番先頭にいたモンスターに一斉砲火。
ツインスクリーミング(同口径2連砲発射共鳴音)が4つ。耳を劈き脳天にまで届く轟音が更に共鳴し合う。
戦闘用ブラジャーが無ければ先ず鼓膜はやられる。
・・・と、そう。×4だった。
散開した小さな対象には何が一番有効か、防御に最も効率的な方法を取られただけの事だった。
本当にそれだけだったが、バケモンの一番近くを走っていたフレッドの愛車、JS−982主力重戦車はAC用にされた35mmチェイン・ガンの牙に紙切れの如く引き裂かれていたのだ。
オレは構えたライフルのスコープ越しの光景に戦慄した。
撃つ、再装填、また撃つ、再装填、爆発――。
棺桶は次々と殺られて逝く。
何時の間にか、残ったのは赤いポールを背負ったあの戦車だけだった。
2連砲が火を吹き――青い爆発。
ビッグ・ガンが、悪魔が心臓を穿たれたのだ。
パルスジェネレータ特有の青い爆光を発しながら盛大に空高くパーツを吹き上げた。
「クライン!・・・このぉっ!!」
敵の無線だ。直後。
ズンっ!
異形な巨人の腕の代わりに付いた120mm滑腔砲は一瞬で、今、奴等の胸を撃ち抜いた感動すら与えさせぬまま。
赤いポールが宙に舞った。
オレは頭の中が真白になった。目の前は真っ暗、お先も真っ暗なのに。
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
「な・・・おいっ伍長!アレン!」
何故だか分からず溢れ出して来た涙に視界を曇らせながらオレは叫んだ。
展開したライフルを鷲掴みにして駆け出す。
何処へ?決まっている!
「オレは・・・オレは・・・・!」
後ろでまだオレを呼ぶ声が聞こえる。
構うものか。
もう、一直線しか見えはしない。
オレ達の戦車を全て、あれだけ食らってまだ食い足りないのか、このゲスども。
真正面に狂ったように、いや狂っているんのだろうオレは走った。風の様に。
当然の如く発射される迎撃レーザー機銃。
肩が、耳が千切れ飛んでいくのが判る。
最早痛みなどは無い。
殺してやる。
今度はオレがお前等から奪う。それだけだ。
コックを思いきり引っ張りハッチを飛ばす。
驚き顔のまま出てきたそいつをオレは残った片手で力の限り絞め上げた。
暫くすると抵抗も止み泡を吹いて白目を剥く。
そうだ、死ね。
死にやがれ。
オレがお前等から・・・・・・!
涙は、とうとう最後まで止まらなかった。
夜、”戦場に散った心”は星になる。
そう言っていた彼女は戦場に消えた。そして、オレも、あいつ等も。
なぁ・・・オレは・・・
『 報告書
被襲撃等―緊急事態発生時送信用緊急報告
―――――――――――――――――――――――――――――――――概要報告
本日0634時に第5偵察小隊所属ライン伍長から”敵進撃”との報告を受理。
それにより我々第1中隊は第1種警戒態勢を発令。
0644時に本陣防衛及び任務上における障害の排除を目的とした戦車9、歩兵42の突撃部隊を編成。
0700時に出撃を敢行、0802時敵軍と遭遇、戦闘へと突入、敵兵力はAC5機。砲戦3、主力1、随伴1の混成小隊。
0837時戦闘を終了。敵兵力の退却に伴い我が軍も退却を敢行。戦果は以下の通りである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――戦果等
○撃破・・・砲戦型1
捕獲・・・主力型1
その他、砲戦型2機に軽損傷を与える事に成功。
●被撃破・・・JS982型9両(全車両)
損失歩兵数・・・約50%(22名)
備考:又、本戦闘の損害により第2・4小隊は潰滅、事実上解散。
第1・3小隊は損耗率過多により戦闘後、解散。
これらに対しては部隊再編成を要求するとともにAC配備に対する認識改善を強く所望する。
―――――――――――――――――――――――――――――――――特例事項(その1)
●尚、本戦闘時に命令無視の上単独にて突撃したアレン=クルドワ伍長は、本来命令違反時の懲処罰規則に則り重営倉に処
すべき対象となるが、同戦闘に於いて死亡しているため被処分者死亡時の隊規則に則り、処分は非適用とする。
●また、この戦闘に於いて多大な損害を生む原因となりせしめた旧中隊長:アーヴリン=ヴィクレイン少佐に対する処分は
本人が本戦闘中に負った重傷に拠り本国送致の措置を取られ、事実上解任となった為、見送るものとする。
―――――――――――――――――――――――――――――――――特例事項(その2)
○第4小隊戦車1号乗員、戦車長:ノベル=マクシミリアン曹長・
砲手:レイラ=サンダース1等兵 ・・戦車によるAC撃破
運転手:ジム=エラン上級2等兵 ・
○第1小隊歩兵、アレン=クルドワ歩兵伍長・・・単独での肉迫戦闘によりAC沈黙
以上4名に対し以上の理由で被適用者死亡のままながら彼等の功を称え、勲一等を申請するものである。
備考:尚、クルドワ伍長は本戦闘中に重大な命令違反を犯しているが、本戦闘における功労はそれを凌駕し余りあるものと判断。
先人を勲一等に申請す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――連絡事項
今回負った多大な損害の原因は、少佐による指揮の遅延以外にも、ACに対する決定的な戦力不足が含まれているものと思われる。
拠って、今後はこのような多大な損害を防ぐ為にも、偵察部隊に対する増強及び偵察回数の追加を提案する。以上。
第3方面軍特殊任務第1中隊々長代理、第1小隊々長エリック=エヴァンス少尉』
彼等は、『家』に帰れた。
俺はいっつもそう考える。
そして、空を見上げて思う。
何か、何かを失い、何かを得る為に悪魔にすら打ち勝った一対の人の事を。
あそこで消えた2つのおっきな心はきっと一際輝く星にナってると。
あの満面に輝く星空こそあの2人が帰るべき『家』だったんだと。
俺は信じてぇ。
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