ユーミルは1人、ガレージに来ていた。
 インフィニティア・バスターを見上げ、溜息を付く。
 グレネ―ドライフル、チェ―ンガン、ラージロケット…
 見事なまでに、実弾兵器ばかりである。
 「弾薬代かかるなあ…きっと」
 そして、また溜息をつく。
 「姉ちゃん、主婦じゃないんだからさ…」
 どこからともなく、呆れた声が聞こえてきた。リットだ。
 「な、何よ〜!しょうがないじゃない!」
 いじけるユーミル。
 「弾薬代けちって落とされるなよ…」
 リットは、バスターの影から出てきた。整備していたのだろう。
 「だいじょーぶ、剣だけで始末するから」
 「姉ちゃん…本当に大丈夫…?」
 リットの声は、ユーミルを本気で心配している。
 心配しているのは、別の意味で、であったが。
 確かにユーミルのパイロットとしての腕前は特Aクラスであったが、ヴェルフも戦闘能力が低いサーチャーに乗っていたとはいえそのユーミルを倒してしまうほどの腕を持っているのだ。
 決して油断の出来る相手でないことは確かだった。
 「ユーミル、ここにいたか」
 ガルドだ。
 「ガルド?どうしたの?」
 「あの若僧から依頼だ。敵の重要拠点を破壊して欲しい…だとよ。敵、ってのが誰かは知らんがな」
 敵―――それは恐らく、アルマゲイツ本社の方だろう。
 どうやらビリーはアルマゲイツ本社に反旗を翻そうとしているらしかった。
 「全く、厄介な事になったぜ」
 知らんがな、といいつつもガルドはその事について察しはついていたため、思わず溜息をついてしまう。
 「すぐに出撃だ。ユーミルはバスターで、俺はライト・ヘルメスで出る。準備しろ」
 ライト・ヘルメスとは、機動力を重視した軽量機体だ。広域レーダーやスナイパーライフルを装備した、ロングレンジ用の機体である。
 もちろん、ブレードによる白兵戦も可能だ。
 「オッケー!」
 リットが手早くACの出撃準備を整える。
 「AC準備良し!輸送機に乗っけられるよ!」
 今回は作戦区域までの距離が結構あるため、輸送機でACを空輸する。
 輸送機のパイロットは、リットだ。
 「インフィニティア・バスター、及びライト・ヘルメス搭載完了!」
 輸送機が飛び立った。


 第6話「拠点破壊作戦」


 1時間ほどで、輸送機は作戦領域上空に到達していた。
 「ユーミル。そろそろ出るぞ」
 「うん、わかった」
 降下準備を始める2人。
 「リット、ACを投下してくれ」
 「おっちゃん、姉ちゃんを頼むぞ!」
 「ああ、分かってる」
 「何よそれ〜!わたしが子供みたいじゃない!」
 ユーミルのいじける声がする。
 『子供だろ』
 ガルドとリットの声がハモる。
 まあ、いつもの事であった。
 


 インフィニティア・バスターとライト・ヘルメスが輸送機から降下した途端、敵部隊の総攻撃が始まった。
 敵はMTが20体程。空中タイプが8、他は全て地上タイプだ。
 「じゃ、始めるとしますか!」
 ユーミルの駆るバスターが敵部隊の中央へ突っ込んでいく。
 ライト・ヘルメスは、持ち前の機動力を生かし、バスターとは違う方へ飛んでいく。バスターが暴れて敵を引き付け、ライト・ヘルメスが援護するのだ。
 真っ先にバスターに向かってきたMT2体は、あっという間にラージロケットの餌食となった。敵の機銃が浴びせられるが、重装甲のバスターにはほとんどダメージを与えられていない。
 そして、後ろからパンチ攻撃を仕掛けようとしたMTは、彼方より放たれた銃弾でその腕を破壊された。
 ガルドのライト・ヘルメスが、スナイパーライフルで遠隔射撃を行ったのだ。
 そのMTは慌てて体勢を立て直したが、その時には既にバスターのブレードが目前にまで迫っていた。
 両断されるMT。
 空中型のMTがバスターに迫る。
 ユーミルは機体を後退させながら、ガトリングガンを空中型MTに浴びせた。
 耐えられず、ものの2秒で空中型MTは爆炎を上げて四散した。
 もう一機は、ジャンプしてブレードで叩き落す。
 こちらもあっという間に爆散した。
 その暴れっぷりに、敵の注意はバスターに集中する。
 そこをガルドの遠隔射撃が逃さない。
 戦闘型だけあり、バスターの力はサーチャーの倍以上だった。
 既にMTの数は当初の半分以上にまで減っている。
 『ユーミル、あとは俺だけで充分だ。お前は施設を破壊しろ』
 ガルドから通信が入る。
 「わかった。じゃ、後よろしく〜」
 ユーミルは機体の向きを変え、施設の方に向かった。
 ビリーによると何かの研究施設のようだが、そんな事は気にしても始まらない。
 ユーミルは次々とロケットを放った。
 施設自体は何の防衛機能も持ってはいないらしく、最早施設は破壊されたも同然だろう。
 残ったMTも、次々とガルドに倒されている。
 「今回も楽な仕事だったな〜」
 完全に施設を破壊したユーミルが言った。
 そして、思い出したかのように呟く。
 「そう言えば…前もこんな事言ってたらあいつが…」
 『ユーミル、奴だ!そっちに向かってる!』
 ガルドからの通信だ。
 「う…やっぱりぃ…」
 既にバスターの方でも、その機体を捕らえていた。
 ACヴェルフェラプター。
 「ま、いっか。ちゃんと修理代貰わなくちゃ」
 そう言ってユーミルは機体を反転させた。
 今度は障害物があまり無い為、ダミー作戦は使えないだろう。
 蒼と黒の対決が、再び始まろうとしていた―――が。
 「さあて、リベンジ、リベンジ♪」
 大丈夫なのだろうか?



 後書き
 第6話「拠点破壊作戦」
 ……何かだれてますね。
 短いし何か。
 コラ自分、大丈夫か??
 せっかく戦闘シーンが出てくるようになったのに。